認知症の患者さんからのセクハラにどのように対応するか
今回のケースでは、対象となった技能実習生の女性は22歳で、日本語は勉強中ながらも愛想がよく、他の利用者からの評判も高かったそうです。そんな彼女に対し、患者さんは一方的に強い好意を抱くようになり、「この子と再婚するつもりだ」「遺産は子どもには渡さず、すべて彼女にあげる」などと、かなり踏み込んだ発言をするようになりました。
特に問題となったのは、入浴サービスの際に全裸の状態で彼女に繰り返し抱きつくという行為です。足腰の弱い高齢者であるため、力ずくで振りほどくことも難しく、彼女はどう対処してよいか戸惑ってしまいました。
高齢や病気による行動であることを頭では理解していても、やはり怖さや不安は拭えず、精神的なストレスから彼女は数日間仕事を休むことに。その後、心のケアのため、別の業務への配置換えとなり、患者さんの担当を外れることになりました。
高齢になることや認知症の発症は誰にでも起こりうることであり、現代医学でもまだ完全な解決には至っていない分野です。そうした現実に、家族や周囲の支援者がどう向き合っていくかは、超高齢社会を迎えた今、私たち全員が真剣に考えなければならない問題です。
そして、こうした課題が、病院ではなく家庭という閉じた空間で顕在化するのが在宅医療の現場。だからこそ、私たちはその一つ一つと丁寧に向き合っていく必要があるのです。