著者のコラム一覧
南渕明宏昭和医科大教授

心臓血管外科専門医、医学博士。

正直者はいない? 「医療訴訟」で執刀医が誰かわからない不思議

公開日: 更新日:

 手術で後遺症を負った患者と裁判を引き継いだ遺族は、病院と医師3人を訴えていました。手術には3人の医師が関わっていました。裁判所は、病院の賠償責任は認めましたが、医師への請求は「3人のうち誰の責任か特定できない」として棄却しています。訴えた患者と遺族は、金銭よりも、医療ミスの真相を知りたかったようです。でも、最後まで真相は明らかになりませんでした。もし、病院側の対応が違ったら、裁判にならなかったかもしれません。

 世の中には真相を隠す病院があります。なかには「個人情報ですから」などと嘯く病院もあります。患者が自分の受けた手術の執刀医を尋ねているのに「個人情報」とはマンザイの「オチ」としか思えません。

 1990年5月の出来事です。シドニーで私は生まれて初めて冠動脈バイパス手術を70代のイタリア人の患者さんに執刀しました。術後経過はまったく問題ありませんでしたが、毎日、病棟に彼を訪問しました。

 彼は察知して「おまえが私の手術を執刀したのか?」と聞くので「そうです」と答えました。彼はにっこりして「これからおまえはどれぐらい、この手術をやるんだ。1000例か? 1万例か? 私がその1例目になれたことはとてもうれしい!」と言ってくれました。その時の彼の顔は目に焼き付いています。

 何があっても、自分は心臓外科を一生続けるぞ、と心に誓った次第です。何が起ころうと、誰がどう言おうと、正直を通す!「咸有一徳」(「書経」商書17編)です。 

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大苦戦「うたコン」がテレ東音楽祭と昭和歌謡に寄せて復活のノロシ! 矢沢永吉、井上陽水の名曲も次々と…

  2. 2

    Number_i「100億円プロジェクト」始動 矢沢永吉も壁にぶつかった世界進出がいよいよ現実に

  3. 3

    大和ハウスが「新築戸建て住宅」販売を都市圏に集約…もはや地方で売るのが難しくなった背景

  4. 4

    クレイジーケンバンド横山剣さん「五木寛之さんからいただいた歌詞は、すぐにメロディーが思い浮かびました」

  5. 5

    《芸能界ってなぜ『在日』を隠すの?》…中村ゆりさんがルーツを胸に「負けん気」を貫いた44年の生涯

  1. 6

    巨人・戸郷翔征が試合ブチ壊し! 桑田真澄前二軍監督が去り、漂う「万策尽きた感」

  2. 7

    日本ハム助っ人レイエスに「70万ドル請求訴訟」 タティスJr.も敗れた“収入10%契約”の落とし穴

  3. 8

    『スマスロ ミリオンゴッド』導入から4カ月、目立つ空き台の裏でファンが期待するホールの対応

  4. 9

    巨人ベテラン坂本勇人の評価が爆上がり! 改めてクローズアップされそうな「打撃・守備以外の魅力」

  5. 10

    萩本欽一〈45〉斉藤清六を全国区にした誰も知らない裏話 “弟子入りNG”から評価を一転させたんです