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あまたの青年が夢を語らい、そして去っていった

<新宿三丁目 どん底>

 ドンカクこと、オリジナルのどん底カクテル650円を飲みながらか定かじゃないが、詩人の金子光晴は「ドンカクの唄」と題し、こう詠(うた)っている。
〈ドンカクをなみなみ注いで/コップをまえにおくと/ふしょうぶしょうに/この世界はうごきだす/もう、どっこへもゆくところはない筈なのに/星は、目をしょぼつかせながら案内するために/しかたなし〉

 一体どのくらいの青年が、ここで夢を語らい、去っていったのだろう。新宿に闇市が軒を連ねる1951年、俳優養成学校「舞台芸術学院」第1期生の矢野智氏が和洋酒店として開店。店名は、矢野氏が学長で劇作家の秋田雨雀氏に相談したところ、「『どん底』の舞台が最後の舞台になるかもしれないから『どん底』にしたらどうだ」と、ゴーリキーの戯曲からつけてもらったという。以来62年、三島由紀夫に黒沢明、吉行和子ら文壇に映画関係、女優に俳優、そのタマゴたちを中心に、青年が杯を交わしてきた。もとい、今も交わしているというべきだろう。

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