芳醇な樽酒を飲むまでの、長く遠い道のりよ

公開日:  更新日:

■岩手屋(湯島)

「あの時はもう二度と、こいつを出せないんじゃないかって……、そう思いましてね」
 湯島は天神下交差点を上野方面へ歩き、ふたつ目の路地を右へ曲がったところにある店のカウンターの奥。店主の内村嘉男さんが「酔仙 本醸造」と書かれた4斗樽のカランを回し、酒を徳利へとつぎながら、しみじみとつぶやいた。

 あの時とは、震災のことである。東北の沿岸部には、銘酒の酒蔵がいくつもあり、全国の飲んべえを喜ばせていたのだけれども、大地震と津波によって壊滅的な損害を被った。岩手の銘酒、酔仙の酒蔵も陸前高田にあったため、もうどうすることもできなかったという。

 樽酒750円の徳利を傾け、杯に口をつけると、芳醇(ほうじゅん)な味と香りがして、ゆっくりと心地良い酔いが五臓六腑(ろっぷ)に広がっていく。実に2年8カ月ぶり。50年以上、樽酒にこだわってきた店に、ようやく“顔”が戻ってきたのである。注文ごとに供される小皿のアテ(無料)がまた、うれしい。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

最新のライフ記事

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    売り込みは好調も…河野景子“豪邸ローン2億円”の逼迫台所

  2. 2

    劇的試合続くも外国人記者ソッポ…錦織圭はなぜ“不人気”か

  3. 3

    CM中止で加速…NGT48イジメの構図と暴行事件の“犯人”探し

  4. 4

    参院選まで半年…野党共闘を阻む立憲・枝野代表の背信行為

  5. 5

    全豪OPで話題…大坂なおみが“スリム”になった深~い理由

  6. 6

    毎勤不正で新疑惑「数値上昇」の発端は麻生大臣の“大号令”

  7. 7

    NGT48メンバー暴行事件を追及 “敏腕ヲタ記者”の評判と執念

  8. 8

    NGT48メンバーは自宅に男が 地方アイドルが苦しむジレンマ

  9. 9

    早とちり小池知事…都が鑑定の“バンクシー作品”には型紙が

  10. 10

    NGT暴行事件の黒幕か アイドルハンター“Z軍団”の悪辣手口

もっと見る