年収1000万円捨て養蜂家に転身 元エリート営業マンの現実
終身雇用制の崩壊が語られるようになって久しいが、年収1000万円を捨てて養蜂家に脱サラした人は珍しいだろう。千葉県袖ケ浦市にある坊ノ内養蜂園の鈴木一さんだ。大手外資系医療機器メーカーの敏腕営業マンだった鈴木さんが、養蜂家への転身を決めたのは10年ほど前のこと。
「大手企業で60歳まで勤め上げた父が定年後に力を持て余しているのを見て、僕は生涯現役で働きたいと思っていました。子どものころから自然が好きで、やるなら農業だと決めていた。そんな時に近所の養蜂家に巣箱を見せてもらい、興味を持ったんです」
養蜂業界について調べてみると、国産の蜂蜜は全体の7%しかない。養蜂家は高齢化が進んでいるし、ミツバチの数も減っている。
「誰もやりたがらない衰退産業だからこそ、新規参入者にもビジネスチャンスがある」
そう感じた鈴木さんは養蜂家に弟子入りし、2年の兼業期間を経て40歳の時に会社を退職した。家族の反応はどうだったのか。
「妻には会社を辞めてからの事後報告です。もちろん、大ゲンカ(笑い)。きつい、汚い、カッコ悪いの農業3Kに、I(痛い)が加わる仕事ですからね。しかも、当時は上の子が3歳くらいで下の子はお腹の中。それでも意志は揺らぎませんでした」