雑巾のにおい? エチオピア発の健康食「インジェラ」の味

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「インジェラ」という食べ物をご存じだろうか。エチオピアの人々がこよなく愛する主食なのだが、現地で口にした日本人旅行者の評価がすごい。「見た目は雑巾」「においはボロ雑巾」「口に入れるとオエッてなる」……と何とも散々な言われようなのだ。

 しかし、一方で栄養価が高いことから近ごろは健康食品としても注目を浴びている。謎多きインジェラ。いったいどんな食べ物なのだろうか。

「まずいと言っている人は“本物のインジェラ”を食べたことがないんですよ」

 そう話すのは東京・中目黒にある「クイーンシーバ」のオーナー、シュレックさん。1990年に東京初のエチオピア料理店としてオープンしたこの店には、インジェラを目当てに訪れるお客さんも多いという。

「インジェラの原材料はテフというエチオピア原産のイネ科の穀物です。1粒およそ2ミリという世界最小の穀物ですが、玄米の倍以上の食物繊維や鉄分を含むし、カルシウムも豊富。そのうえグルテンフリーだから小麦アレルギーの人も食べることができるんですよ」

 テフはもともとエチオピアと隣国のエリトリアでしか栽培されていなかったが、栄養の優れたスーパーフードとして欧米を中心に需要が急増。2006年にはエチオピア政府が、国内消費が賄えなくなると危惧して輸出を禁じたほど希少な穀物だ。元サッカー選手のベッカムの妻ビクトリア・ベッカムといった世界的なセレブが大ファンと公言していると報じられたことも。

 その栄養満点のテフから作られたインジェラ。さっそく出してもらうと、ツンとした酸っぱいにおいに鼻が刺激された。見た目はグレーのクレープ生地といったところか。表面にはふつふつと気泡ができている。なるほど、この色とにおいを旅行者は「雑巾」と揶揄したのだな。

「テフを製粉して水を加え、発酵させてから蒸し焼きにするので独特な酸味が出るんです」とシュレックさん。発酵食品ということでますます体によいわけだが、お味はというと……酸っぱい! ただ、よく噛むと穀物の甘味がじわりと広がってくる。

「インジェラだけで食べることはあまりなく、煮込み料理や焼き物をのせて食べるんですよ」

 言われた通りに煮込みと一緒に食べると、酸味が和らいで甘味が増し、全体的にはさっぱりとした味わいになった。なんだ、おいしいじゃないか。

「2週間かけて発酵させるんですが、毎日菌の様子を見て水を替えたりと、いい状態を保つのが難しいんです。まずいと言っている人たちは発酵がうまくできていなかったり、添加物を加えたインジェラを食べたんだと思います」

 日本で本場のピュアなインジェラが食べられるのは「クイーンシーバ」くらいらしい。ただ、15年に輸入規制が緩和されてテフの実も徐々に入ってくるようになったので、健康食として取り入れる際にはサラダなどにテフを入れたり、玄米のように白米に混ぜて食べるのもいいだろう。

(取材・文 中川明紀)

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