鶯谷「DEN」採算度外視の看板メニュー「グラパン」は850円
オンリーワンの喫茶店が、コーヒーだけで経営を成り立たせるのは厳しいと何度か書いてきた。やはり、フードメニューがないと厳しいと。
その点、鴬谷にある「DEN」には鉄板のメニューがある。「グラパン」がそれ。3分の2斤を使用した食パンの中をくり抜き、そこにエビとハムとベーコンが入ったベシャメルソースを流し込み、チーズをかけてオーブンで焼いた一品だ。
もともとはDENを創業した父親時代のまかない料理。店に耐熱皿がなかったので、食パンで代用したことに始まった。現店主の根本たかのりさんが改良を重ね、今の味にこぎ着けたそうで、客の9割が注文するという。これさえあれば、経営に困ることはなかろうと思いきや、根本さんは「それがねえ……」とぼやく。
フロアで5年働く坂井香代子さんが、横から解説してくれた。
「この人、『こんなに使うの?』と叫んでしまうぐらい材料を買い込んできちゃうんです」
「おカネは大事ですよ。でも、気にしていたら、うまいものは作れません」(根本さん)
当初は1本の食パンを5等分していたが、4等分に替えた。コクを出すために、ソースに生クリームを加えるようにした。「これで何人分」などと考えずに仕込みをする。確かに採算度外視だ。