日米地位協定研究の第一人者「合同委員会に住民参加を」
辺野古新基地建設や度重なる米軍絡みの事故と犯罪で常に取り沙汰される「日米地位協定」。米軍にあらゆる国内法が適用されない主権剥奪状態が、北方領土交渉の妨げにもなっている。令和の時代も、この国は世界に例のない異常な状況に甘んじるつもりなのか――。協定研究の第一人者である法政大学教授・明田川融氏が穏やかな表情で鋭く問いかける。
■米軍犯罪激発で身柄引き渡しを勝ち得た韓国
――この2年ほどは、沖縄県が進める「他国地位協定調査」に協力しているそうですね。
県は、いわゆる本土の人に協定の問題点をもっと知ってもらおうと難解な条文中心の調査を避け、あくまで事例重視。良い手法と思い、お手伝いしています。駐留各国の米軍起因の事故や犯罪、騒音問題などへの対応と比べると、日本の問題点がより鮮明になります。
――具体的にはどのような違いがありますか。
例えば日本では基本的に米軍基地内は立ち入り禁止ですが、県が調査したNATO域内の独、伊、英、ベルギーでは自治体の首長や担当職員に年間パスが支給され、適切な理由があれば、いつでも立ち入り可能です。受け入れ国の主権をより尊重した結果で、米側も理解を示しているようです。
――2年前に普天間第二小学校の校庭に米軍ヘリの窓枠が落ちても、3年前にうるま市で米軍属の男に20歳の女性が強姦・殺害されても基地内に入れない日本とは大違いです。
日米合意で返還する予定の基地でさえ、跡地利用の立ち入り調査は返還日の150労働日(約7カ月)前からと設定されました。沖縄県は測量や埋蔵物調査などの期間を考慮し、3年前からの実施を求めたのに、こんな短期間では測量もままなりません。
――同じ敗戦国の独・伊との差には愕然です。
欧州は冷戦終結後、米軍依存が以前より弱まり、駐留軍機の大事故も相次いで、協定改定を求める世論が高まりました。その声に政府が応え、主権の象徴である国内法適用を勝ち得たわけです。
――世論の盛り上がりが重要なのですね。
韓国でも米軍絡みの犯罪が激発し、国民の安全が脅かされると、協定改定を迫った歴史がある。2012年には米兵容疑者の韓国側への身柄引き渡し要件が大幅に緩和されたと聞いています。
――日本政府にも見習って欲しいものです。
日米地位協定は第16条で米軍に日本の法令尊重を義務づけていますが、あくまで努力義務にとどまります。外務省も「一般国際法上、特別な規定がなければ外国軍隊には受け入れ国の法令は適用されない」との立場でしたが、日弁連や野党から具体的な「国際法」を問われても明示できず、ついにHPの説明から「国際法」の文言を削除しました。
――いい加減ですね。
ただ、この問題は「独立国の主権侵害はけしからん」と議論されがちですが、第一に守るべきは市民の生活です。沖縄では早朝や深夜も米軍機の爆音が睡眠を妨げ、低空飛行訓練で身の危険にさらされています。観念的な議論より、どうすれば静かな夜や安全を取り戻せるのかというリアリズムが大事だと思います。県民にとって喫緊の課題を解消するには、航空機の安全運航を定めた日本の航空法第6章を特例法で米軍機には適用させない状態を改め、NATO域内と同様に国内法を適用させるしかありません。


















