「麺や庄の」など運営 「麺庄」社長・庄野智治さんの巻<3>
割烹 新宿 中嶋(東京・新宿)
きょうのランチは、素朴な和食が食べたい。午前中に仕事をしながらそんな気分になると、決まってお邪魔するのが、こちらです。
新宿3丁目の丸井の裏には、名曲喫茶でお馴染みの「らんぶる」が今も店を構えています。その向かいの路地を入ってすぐ。左手に「割烹 中嶋」の看板が目に留まります。注意して歩いていないと、通り過ぎてしまいそうなたたずまい。3丁目交差点の喧騒とは裏腹に、落ち着いた雰囲気が漂っています。
■ランチはイワシ1本
ランチの営業は11時30分からですが、開店を待ちわびている人が連日、地下にある店の階段に列をつくっています。
ピークをはずして12時50分ごろに到着。階段には5人ほどの列があって、待っている間にもさらにお客さんが。でも、15分ほどで入店できました。
ランチの食材は、イワシのみで、メニューは「刺身」「フライ」「煮魚」「塩焼」「柳川鍋」の5種類。待っている間にメニュー表を渡され、あれこれ悩むのが順番待ちの楽しみですが、私は「煮魚」の定食に単品の「刺身」を追加すると決めていました。後ろの常連さんもそのクチで、「『刺身』の1・5」と慣れたオーダーです。
ホールを仕切る女将さんと女性のスタッフは、「相席でもよろしいですか」と確認しながらお客さんを誘導します。その誘導が巧みで、私と後ろの方は1人客で、6人掛けのテーブルの奥に向かい合う形で着席。ほどなく2組の2人客が、われわれの横に2人ずつ並ぶ形で座り、1席も余すことなく座りました。
“刺し身1.5”の常連客は「レモン多め」
客層は30代後半から上で、騒ぐ人はいないし、テーブルも広々しているので、相席でも周りを気にすることはありません。ゆったり食事ができるのです。
目当ての煮魚は2匹。箸がスッと入ってふっくらとした炊き加減。ひと切れを口に運ぶと、甘すぎず辛すぎず、あめ色の身はちょうどいいあんばいで、一粒一粒の粒が立ったご飯が進むのです。
薄切りの刺し身は、鮮やかなピンク色が鮮度のよさを物語っています。食べて納得。ビンビンの鮮度で、ゴマとネギがほどよく和えてあり、これがいい仕事をしています。そういえば向かいの方は「レモン多めに」と仲居さんにつけ足していましたが、レモンを搾ってみてその意味が分かったのです。
イワシのウマ味にほどよい柑橘の酸味が加わって、ゴマの風味とネギの香りの四重奏。ランチながらどこまでも丁寧な仕事ぶりが光るのです。
5種類とも、ご飯と味噌汁、お新香がついて880円(柳川鍋のみ990円)は、めちゃくちゃリーズナブル。メインに選んだ定食にほかの料理の1品追加は660円。刺し身とフライのハーフの追加は、各385円。そんな料金体系なので、1540円で極上のランチを堪能しました。午後の仕事にはずみがつく名ランチです。
(取材協力・キイストン)
■割烹 新宿 中嶋
東京都新宿区新宿3―32―5 日原ビル地下1階
℡03・3356・4534
▽麺庄「麺や庄の」を皮切りに、グループは10店舗に拡大。「麺や庄のgotsubo」はフレンチのような鮮やかなつけ麺で、「自家製麺MENSHO TOKYO」のチャーシューは豪州産のラムを使用するなど全店が超個性的。
▽しょうの・ともはる ラーメンクリエーターとして独創性あふれるラーメンを開発。食材の追求にも余念がなく、試行錯誤の末にラム肉にたどり着く。豪州産の羊骨でダシを取り、チャーシューもラム肉に。若手の育成にも力を入れている。