「麺や庄の」など運営 「麺庄」社長・庄野智治さんの巻<4>
東坡(東京・神宮前)
はふはふしながら辛いものを食べると、体の内側からぽかぽかしてきて汗をかき、スッキリするでしょう。精神的にフレッシュになるだけではなく、ヤル気も湧いてきますよね。新店舗をオープンしたり、新メニューで勝負したりするときは、気合が必要で、そんなときにお邪魔するのが、こちらです。
激辛の麻婆豆腐でとにかく有名で、そのたたずまいはインスタ映えします。麻婆豆腐がインスタ映えというのは、ピンとこないかもしれません。写真の通り、こんもりと丼からあふれんばかりに盛られているんです。
ラー油が丼のふちをつたわり、滴り落ちて受け皿にたまる姿は、ここでしか見たことがありません。辛いものが苦手な人にはホラーでしょうが、辛党はのどが鳴ります。インスタ映えというわけです。この麻婆豆腐目当てのお客さんが訪れるのですが、単独で頼むことはできません。コースをお願いするか、単品でほかのメニューを何品か注文したうえで麻婆豆腐を頼むか。どんな注文の仕方にせよ、最後のクライマックスに麻婆豆腐が登場します。カウンター10席ほどの店内は、みんなが同時に麻婆豆腐に向き合うのです。
何でもおいしくて、中でも好物のひとつはタコとキュウリのサラダ。それぞれスライスして、パクチーとニンニクを和えただけ。中華では珍しくオリーブオイルを使用し、あっさりとしつつも、香りが豊か。シンプルなのにとてもおいしい。
トマト玉子炒めもいいですが、冬ですから牡蠣の玉子炒めに。ご主人の出身地台湾の名物料理はほのかに利かせた唐辛子がアクセントに。これまた表面に散らした春菊が香りづけにいい。牡蠣はふっくらとぷりっぷり。中華ならではの超強火がいいのでしょう。カウンターから見える中華鍋の火力がすごい。それでサッと仕上げるから、軽い食感とふっくらさが実現するのです。
客が一斉に麻婆豆腐に向き合う姿は格闘技
かくして真打ち麻婆豆腐が登場します。
「うちのは辛いだけじゃない。ウマ味がある。白湯のスープがおいしいからね」
ご主人の説明通り、辛さの奥にスープのウマ味と花椒の香りが口いっぱいに広がるんです。カウンターのあちこちから「辛い。でも、おいしい」という声が上がって、女性もティッシュで汗を拭っています。
それにしても、カウンターの客が一斉に麻婆豆腐に向き合う姿は、ある種格闘技のよう。そんな演出も、気合が入る一因かもしれません。完食したときには、冬でも汗だくで、満足感がとてもあります。「よし、仕事を頑張ろう」という気持ちになるのです。
ネットの口コミにある通り、1人1万円超とお高めですが、麻婆豆腐と“格闘”しながら気合を入れたい人はぜひ!
(取材協力・キイストン)
【東坡】
東京都渋谷区神宮前3―24―9
℡03・3405・9944
▼麺庄「麺や庄の」を皮切りに、グループは10店舗に拡大。「麺や庄のgotsubo」はフレンチのような鮮やかなつけ麺で、「自家製麺MENSHO TOKYO」のチャーシューは豪州産のラムを使用するなど全店が超個性的。
▽しょうの・ともはる ラーメンクリエーターとして独創性あふれるラーメンを開発。食材の追求にも余念がなく、試行錯誤の末にラム肉にたどり着く。豪州産の羊骨でダシを取り、チャーシューもラム肉に。若手の育成にも力を入れている。