継承者不足も影響…墓参りと墓地購入はスマホで済ます時代
出生数が過去最少の86万人となった2019年は、実は死亡数が137万人で戦後最多を記録している。近年の傾向として目立つのは、お墓の購入者の半数が女性だということ、継承者不足から地方からの改葬が増加中、そしてスマホでお墓の購入を済ませることだ。
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「お墓を購入されるボリュームゾーンである70代は、今やスマホもパソコンも使いこなします。実際にご自身でアクセスされ、資料請求や見学予約もなされます」
こう話すのは、霊園やお墓の検索サービス「いいお墓」を運営する鎌倉新書の担当者だ。
20年ほど前までは、新聞の折り込みチラシや専門誌などの情報から寺院や墓地の空きを探し、それから石材店と交渉してお墓の購入と施工をお願いしたもの。
しかし、今やスマホやパソコンで一発検索。わかりにくかった土地代(永代供養)や墓石代(工事費)の相場も一目瞭然で、墓石・名入れ・設置工事込みで49・8万円という格安の石材会社を見つけることもできる。
「墓地・霊園の区画の購入の際は、一般的な土地売買と同様にスマホで完結することはできませんが、その前段階の現地見学はほぼネットを経由して予約があります。1、2カ所の現地見学で購入を決められるケースが最も多いようですが、これもネット経由で事前に資料を取り寄せたり、電話で相談したり、現地写真や口コミなどスマホを最大限に活用されているからだと思われます」(前出の鎌倉新書の担当者)
そして、意外や意外、お墓の購入で最も熱を帯びるシーズンが、1月から3月にかけての冬だという。正月に家族が集まり、お墓の話題が出る。その直後だから購入者が殺到するという理屈だ。
検索サイト「いいお墓」では、霊園の現地見学で3000円分のギフト券をプレゼントするキャンペーンの真っ最中だ。
一方、都立霊園の申し込みに関しては、例年6月に始まり、8月に抽選が行われる。こちらもネット申し込みが可能。
携帯アプリで故人を供養
スマホの画面で墓参りと聞けば、眉をひそめる人は多いだろう。
しかし、遠方でお墓参りに行けない人、仕事や介護で忙しい人にとって、供養したいという気持ちは一緒だ。
画面上で墓石に水をかけたり、お線香やお経、お供え物をお供えするアプリが活躍している。
「どこでも線香」は、どこにいても線香があげられるアプリ。まずは画面中央の額縁をタップし、故人の写真を選択。次に画面下の香炉をタップすると、線香があがるという仕組みだ。「供養ライフ」は故人の命日を登録することで、忘れがちな回忌法要を自動で表示。「般若心経」をスマホ画面で写経(なぞる)できる機能も付いている。
また、自分の代わりにお経を唱えてくれることを希望する人は、「おまいり―お経でお参り」(写真)が便利。真言宗、曹洞宗、日蓮宗、浄土宗、浄土真宗などに対応し、実際にお坊さんが読んだお経の音声が流れる。無宗派の人はヒーリング音楽やクラシック曲が流れる「おまいり―メロディでお参り」もある。
「本来はご自宅のご仏壇などで拝むことが一番いいのですが、マンションなど住宅事情からできない人もいます。大事なことは、故人に感謝し、悼むという気持ち。スマホのアプリも完全には否定できません」(ジャーナリスト・中森勇人氏)
アプリに抵抗があって当然だが、大事なのは故人に思いを馳せる心だ。