75歳から年金もらうなら…何歳まで生きるとお得になるのか

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 コロナ禍で揺れる中、先の国会で年金に関する改正がひっそりと、しかし大規模に行われた。全ての国民の働き方や老後の生活に関わることだけにしっかりとチェックしておきたい。


 ◇  ◇  ◇

 今回の年金制度改正で何が変わったのか?

 知っておくべき大きなポイントは5つだ。

①〈老齢年金の繰り下げ受給を75歳まで延長〉

②〈個人型確定拠出年金イデコ(iDeCo)の加入可能年齢を60歳から65歳へ延長&制限緩和〉

③〈パート(短時間)労働者の厚生年金加入義務の拡大〉

④〈60~65歳の在職老齢年金の支給停止基準を28万円から47万円に引き上げ〉

⑤〈65歳以降も働けば年金額を1年ごとに増やせる在職定時改定の導入〉

 難しい文言が並んでいるが、要するに人口が急速に減るので、「いっぱい働いて年金の掛け金を納め続けてくださいね」ということ。そういう狙いで制度改正され、その代わり働く人にとって少しだけ「利点」も用意されている。

「老齢年金は2000年の年金改正で受給開始年齢が60歳から65歳に段階的に引き上げられましたが、今回は将来的な70歳受給開始の布石とも考えられます。ただし、イデコの加入条件緩和など選択によってはメリットも少なくありません」(特定社会保険労務士の稲毛由佳氏)

 イデコは公的年金に上乗せする私的年金制度。これまでは企業型確定拠出年金(DC)に加入しているサラリーマンに一定の制限があったが、22年10月以降は同時に加入できるようになる。

 そのメリットは、積立金の全額が所得控除され、運用益(通常は20・315%)も非課税になること。仮に年収700万円のサラリーマンが月2万円を積み立てた場合、約7万2000円の節税になる。

 もっとも、運用益が出るかは自己責任だ。

主婦パートにも加入義務が拡大

 短時間労働者の厚生年金の加入拡大は、月収8・8万円(年収106万円)のパート主婦で計算すると、同保険料として月額8100円(自己負担分)が月給から引かれてしまう。その代わり20年間勤務で、将来的に月額9000円(年10万8600円)の年金が増額されるというものだ。

 また、在職老齢年金については、60~64歳のサラリーマンは現行、月給が28万円を超えると特別支給の年金が減らされてしまっていたが、この収入の基準額を65歳以上と同じ47万円に引き上げるというもの。フルタイム勤務がしやすくなる。


 そして最も多くの人が気になっているのが、老齢年金の「繰り下げ受給」だろう。

 年金は通常65歳の受給開始となっているが、任意で60歳から70歳まで1カ月単位で開始時期を選べる。これが75歳までに延長される。

 受給開始を先送りすることを「繰り下げ受給」と呼び、“ご褒美”として1カ月ごとに「0・7%」ずつ受給額が増える。つまり、70歳まで5年繰り下げれば、受け取る金額は42%増。75歳まで10年の繰り下げなら84%増というわけだ。

現在、厚生年金の「モデル世帯」の平均受給額は月額22万724円(18年度)。

 夫婦ともども75歳まで受給を繰り下げれば、月額は84%増の40万6132円となる。

繰り上げ減額率は月0.5%から0.4%に縮小

 一方、その反対に受給を早めることを「繰り上げ受給」と呼ぶ。これまでは1カ月早めるごとに「0・5%」ずつ減額されてきたが、その減額幅が「0・4%」へと、ちょっぴりお得になる。

 これにより、繰り上げ受給した場合の損益分岐年齢にも変化が。これまで60歳からもらう人は、65歳から開始の人に76歳8カ月でトータル受給額が追いつかれた。これから先は長生きするほど損することになる。それが減額が0・4%になったことで損益分岐年齢は80歳10カ月に。男性の平均寿命が81・2歳だから、60歳からでも65歳からでもあまり合計額は変わらないことになる。

 では、75歳まで繰り下げて受給すればどうだろうか? 65歳開始の人と比べ84%増額されるため、計算上は86歳まで長生きできればトータルで65歳の人を上回る。ということは、平均寿命87・3歳の女性は、75歳から年金を受け取った方が一番お得だということになる。

繰り上げ、繰り下げの損益分岐年齢は?

 ただ、ここでひとつ落とし穴が……。年金生活者にも税金はかかる。厚生年金の1人当たりの平均月額14万5865円であれば非課税だが、75歳に繰り下げ受給して84%増の26万8392円に金額がアップすると、年間20万円弱の所得税・住民税が徴収されてしまうのだ。この税金分を加味すると、86歳ではなく、おおむね90歳まで長生きする必要が出てくる。

新型コロナウイルスにより、日本人の働き方、老後の考え方も変わりました。以前なら65歳以降も働きたいという男性が多くいましたが、年金はわずかでも、早くセミリタイアしたい人が増えたように感じます。とはいえ、75歳の繰り下げ受給の84%加算は大きいでしょう。例えば、国民年金加入の自営業者は75歳までがんばって働いてから年金をもらえば、満額年78万1692円の1・84倍、年約144万円の受給額になります。夫婦で自営ならこの2倍です。また、サラリーマンは『老齢基礎年金(国民年金)』と『老齢厚生年金(報酬比例)』をそれぞれ別に繰り下げ選択できます。どういうことかと言うと、基礎年金と厚生年金を原則通り65歳からもらう方法もあるし、あるいは厚生年金のみ65歳で基礎年金は70歳または75歳……などとさまざまに選択できるのです」(稲毛由佳氏)

 うまく選択すれば、税金を払わなくてもいいようにできるわけだ。

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