観察好きのWEBデザイナー 表現し始めたことで仕事が広がる
今回紹介したいのは東京在住のフリーランスデザイナー、ちびっと(chi―bit)さん。アラフォーの女性だ。ちびっとさんは気管支喘息、片頭痛、頻脈、アレルギーなどがあり、月に1度は病院に通う。フルタイムでのオフィスワークがなかなか難しくコロナ禍の前から在宅ワークをしているが、彼女のスキルは副業や在宅ワークを広げる可能性を持っている。
「本業はウェブサイト制作です。全体の方向性を決める要件定義から始まって、レイアウト、デザイン、コーディング(プログラミング)まで行います。もともとコーディングから入ったのですが、デザインの領域まで手がけるようになりました」(ちびっとさん)
ちびっとさんは知らない事柄に出合ったときにとことん調べて理解したことを自分なりに表現することが楽しいと話す。それが副業や職域の拡大につながっているようだ。
「たとえば、絆創膏ってよくよく観察すると、いろいろな発見があるんです。個包装から取り出しやすくツメがついていたり、台紙が真ん中から半分に分かれていて非粘着部分があってとりやすくなっていたり(笑い)。そのほかにも錠剤のシート、ノギス、MOLESKINEの手帳など、いろいろとスケッチしています」
ちびっとさんは、これらの「観察スケッチ」をブログやSNSで発信。カワイイ感じが残るインフォグラフィック(情報、データ、知識を視覚的に表現したもの)はツイッターのフォロワーらに刺さり拡散されている。スケッチには目立たない感じでアフィリエイト(ちびっとさんのサイトを見てから商品購入に至った場合に発生するインセンティブ型の広告)も設置。ちびっとさんの投稿をきっかけに観察スケッチの世界にハマる人もいる。檜垣万里子さんは「気になるモノを描いて楽しむ 観察スケッチ」という書籍を発売。書籍の中でちびっとさんが紹介されている。ちびっとさんは能力を生かして物販も始めた。
「在庫リスクを抱えることなく、Tシャツ、パーカ、サンダル、キャップ、スマホケースなどいろいろなオリジナルグッズが作れるSUZURIというサービスがあるんです。牛の部位の呼び方を調べているうちにできたキャラクター『うっしっし』や、柴犬のキャラクターなどをグッズ化しています。SUZURIがどういうサービスなのか知りたかったというのもあって、販売をしてみました」
アフィリエイトや物販での収入、そして本業とのつながりを聞いた。
「アフィリエイトの収入はバズっても5000円くらいですよ。物販も売れた月で1万円くらいなので微々たるものです。しかし、ブログを見てイラストを気に入っていただいて本業につながることもあります。ル・コルビュジエのロンシャン礼拝堂、ローマのコロッセオ、タージマハル、日本の国会議事堂など好きな建築物のスケッチとその解説を書いたシリーズがあるのですが、それを気に入ってくださって、体が不自由だったり、外出困難な人たちが遠隔で操作するロボット『OriHime(オリヒメ)』を接客に使う分身ロボットカフェのイメージイラストを描く機会をいただきました。こういうのはとてもうれしいです」
ちびっとさんは、10代の頃から家にある百科事典でジャンルを問わずに調べることが好きだった。それがインターネットの時代になり調べられる範囲が拡大。さらに表現するスキル(技術)を自分なりに確立していることからこそ、さまざまなメディアへの表現に応用が利いている。