コロナで「自宅療養」に…必要なモノ・あったらいいモノ
入院待ち、または自宅療養の陽性者の数が日ごとに増えている。東京都では24日現在、入院治療中・宿泊療養の計3680人に対し、入院・療養等調整中と自宅療養は1万4547人で、陽性者全体に占める割合は79.8%に達する。自宅での療養に向けて今から何を準備しておけばいいのか。
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東京都では隔離治療を必要としながら、約8割の陽性者が入院できていない。一部有力者には優先的な入院もあるようだが、一般国民は基本、自宅で何とかするしかない。その間は医師からの処方薬も出されず、完全な放置状態になる。
これまで最低14日間は自宅から出てはいけないとされてきたが、現在は発症日から10日間が経過した日(11日目=無症状者は検査日から起算)で終了。療養終了時に義務付けられていた24時間以内で2回のPCR検査も今では行われていない。
この間、大阪府は1日3食の配食サービスを行っているが、東京都や神奈川県では各自で調達しなくてはいけない。つまり、自宅療養は10日間ほどの食料や日用品の備蓄がないといけない。
発熱時を想定しアイスノンや熱さまシートなどを準備
備え・防災アドバイザーで「ソナエルワークス」代表の高荷智也氏がこうアドバイスする。
「地震や台風などの災害では最低3日分の食料(できれば7日分)の備蓄が求められますが、コロナ禍ではその備蓄内容に若干の違いがあります。電気、ガス、水道が使えないわけではないので、自宅療養のための水やガスボンベなどの備蓄は必要ありません。逆に発熱時を想定したアイスノンや熱さまシート、湯たんぽなどを準備しておくといいでしょう」
10日間の療養中はスーパーへの買い物も含め一切の外出が禁止。とはいえ、慌てて大量の缶詰やレトルト食品を買い込む必要はない。
農水省「家庭備蓄ポータル」によると、米2キロは1食0.5合(75グラム)で計算すると約27食分。インスタントラーメンやパスタを食べることもあるだろうから、その分は減らしていい。
もっとも、自宅療養中は、食事が最大の楽しみのひとつでもあるので、なるべく味に変化をつけたい。
食欲がない場合のため、チョコレートやアイスクリームなど家族の好きなものもあるといい。
農水省は「非常時こそお味噌汁」としているが、療養生活では体の機能を円滑に保つビタミン、ミネラル、食物繊維が不足しがち。「ジャガイモ」「タマネギ」「キャベツ」「ニンジン」など常温保存できる野菜を中心にストックし、肉や魚がなくなった時にタンパク質や繊維質を補うため、高野豆腐などでバランスを取るといい。また、ベランダでの家庭菜園は気分転換にもなる。
「サポートのいない独身者はネットスーパーやオンライン通販を上手に活用するといいでしょう」(前出の高荷氏)
例えば、「イオンネットスーパー」「イトーヨーカドーネットスーパー」があり、どちらも新規登録後から当日注文が可能。1回の基本配送料は300円となっている。
呼吸数が毎分30回を超えたら緊急連絡
陰性者が陽性者をサポートする際は、消毒用の次亜塩素酸ナトリウム(「キッチンハイター」などを希釈して使える)を用意。陽性者がトイレや浴槽を使うたびに消毒し、食事の受け渡し時などにはマスクやゴーグル、防護服(ビニールがっぱで代用)による完全防御が必要。高齢者や基礎疾患のある人が家族にいれば、いっそのこと元気な陰性者の方がホテル住まいするという方法もある。
ペットと陽性者の接触も可能な限り制限し、パルスオキシメーター(酸素飽和度測定器)などを使用して、緊急時は保健所の専用電話に連絡したい。
だが、パルスオキシメーターがない場合はどうすればいいのか?
医師向けの「診療の手引き」が参考になる。心拍数や呼吸などバイタルサインを使った異常サインの見分け方だ。それによると、正常な心拍数(脈拍)は毎分60~85回。130を超えると、「中等症以上を示唆するバイタルサイン」として入院の一応の目安にしている。
一方、呼吸の基準値は毎分12~18回。30回を超えると、やはり「中等症以上の示唆」となる。現在のところ、日本では入院基準ができていないが、「年齢(男性70歳以上、女性75歳以上)」「呼吸数(毎分30回以上)」、「酸素飽和度(90%以下)」をAグループとして重症化リスク患者に分けている。イギリスでは男性なら+1点、80歳以上なら+7点、呼吸数20~29は+1点、30以上は+2点……といった具合にポイント制で入院患者を決めている。
■解熱剤は飲んでいいのか?
発熱時に解熱剤や鎮痛剤、漢方薬などの服用はOKなのか? 11月にコロナで約2週間の自宅療養を経験した参院議員(宮城選挙区)で医師の桜井充氏は、38.5度の高熱が出ても免疫の働きを弱めるとして解熱剤は服用しなかったという。解熱剤の代表的なものには、「ロキソニン」「イブプロフェン」「カコナール」といったものがある。ただ、体の節々が痛んで眠れなかったため、関節痛の症状を和らげるために「ノーシン」(アラクスの頭痛薬ブランド名)を服用。さらに胃炎を抑えるため、H2ブロッカーの「ガスター10」(第一三共ヘルスケア)も飲んでいたという。
「解熱剤に関しては悪化した時の症状を隠してしまい重症化に気付くのが遅れますので、内服したい時は医師の了解を得た方がいいでしょう」(浜松医療センター感染症内科部長の矢野邦夫氏)
■保険会社から入院・通院給付金は出るのか?
自宅療養でもうひとつ心配なのが、保険会社からの入院保険金の支払いだ。原則、病院以外の施設(自宅)での治療は支払いの対象外だったが、今回のコロナは保険会社によっては支給される場合がある。
例えば、「かんぽ生命」は、医師の証明書(入院治療状況証明書など)を提出することで、宿泊療養、自宅療養を問わず入院保険金が支払われる。
さらに、コロナ以外の病気やケガで入院していた患者が、病院から早く退院させられた場合もその分の入院保険金が出る。
日本生命、第一生命、明治安田生命、住友生命の大手も足並みをそろえて支払う方向になっている。したがって自宅療養中は保険証書を見比べ、お客さまセンターで手続き方法などを聞いておきたい。