70歳定年“温泉ワーケーション”で三方よし 通信大手も着手

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 コロナ禍で働き方が変わろうとしている。注目されているのがワーケーションだ。ワーケーションとは観光地やリゾート地などに滞在しながらテレワークすることだが、さらに温泉を組み合わせたその名も「温泉ワーケーション」が注目を集めている。観光客減にあえぐ温泉地を救うと期待されているが、温泉の効果で健康に長く働き続ける体の下地をつくることもできそうだ。

 ◇  ◇  ◇

「ワーケーションで三方よしを目指します」――。

 こう力強く言うのは、通信大手BIGLOBEの有泉健社長だ。

 先ごろ、有楽町の東京国際フォーラムで「ONSEN WORK(オンセンワーク)」というサイトをグランドオープンしたと発表。冒頭の社長発言は、それについての抱負である。

 このサイトはワーケーションしたい企業と社員、ワーケーションを受け入れたい温泉地をマッチングするのが目的。

 でも、なぜ通信会社のBIGLOBEがこんなことをするのか?

 実は12年にわたり同社が運営してきた全国人気温泉地ランキング「温泉大賞」が、コロナ禍による温泉利用客の激減で、これまでのやり方では立ち行かなくなった。そこで同社が考えたのが、一般客ではなく企業を温泉地に誘致すること。平日に連泊してもらえれば、客室も効率的に使える。もちろん、企業や社員にとってもメリットは大だ。

 BIGLOBEが自社や協力企業の社員で温泉ワーケーションの実証実験を行ったところ、温泉ワーケーション初日に比べ、最終日は自律神経のバランスが理想の状態に近づいた。さらに末梢血管の健康度も改善されたことが判明。温泉が疲労回復、血液循環の改善をもたらした結果と推察される。アンケートの回答からは「決まった時間に食事をとることで仕事にメリハリが生まれた」「自ら接客を受けることでサービスのアイデアが浮かんだ」など、モチベーション面に効果があることも分かった。

「企業は働き方のオプションを提供して健康経営ができる。社員はストレス発散して仕事の効率もアップ。温泉地は平日の連泊利用で潤う。まさに“三方よし”なのです」(有泉社長)

環境省も「新・湯治」を推進中

 日本では古くから、温泉地に滞在し病気や体の疲れを癒やす「湯治」の文化が根づいている。それとテレワークを組み合わせ、現代的にアップデートしたのが、温泉ワーケーション。そして、これを後押ししているのが、環境省の「新・湯治」の推進プランだ。

 その先駆けとして知られるのが、大分県竹田市の「長湯温泉」である。炭酸泉という珍しい泉質で、江戸時代から湯治場として栄えてきた。

 同地で親子2代にわたり温泉療法にたずさわる伊藤医院の伊藤恭院長(温泉療法専門医=顔写真)が、長湯温泉の歴史と効能についてこう解説する。

「昭和初期には、ドイツで温泉療養学を学んだ九州帝国大学(現九州大学)の松尾武幸博士が、長湯に温泉研究所を開いています。その松尾博士は長湯温泉の健康効果についてこう詠みました。〈飲んで効き 長湯して利く 長湯のお湯は 心臓胃腸に 血の薬〉。血の薬とはすなわち、血行を良くするということです」

 果たして本当に効果があるのか。伊藤院長は30年ほど前、竹田市に請われて長湯温泉を医科学的に分析。すると驚くべき結果が出た。

■温泉で心と体が癒され新しいアイデアも

「心臓から送り出される血液量が、温泉入浴後では2~3割も増えていたのです。これは長湯温泉に含まれる〈重炭酸イオン〉が血管を拡張させ、血流を良くしていたからだと推察されます。サーモグラフィーで調べると、普通のお風呂より長湯温泉の方が長く温浴効果が続きました」(伊藤院長)

 ここで重要なのは、運動や温熱で強制的に血流を促すのではなく、炭酸イオンの働きで血管が拡張され、血圧を上げずに血流が良くなること。だから心臓への負担が少ないのだ。さらには飲泉などにより腸内細菌が増え、肥満防止や糖尿病の改善にも役立つという。

 こうした温泉の効果を目当てに、伊藤病院には全国各地から心臓病や糖尿病の患者が温泉療法を受けにやって来ているそうだ。まだ病気になっていなくても、温泉ワーケーションで予防することは大いに期待できそう。

 さらに竹田市は2019年に温泉療養の本場ドイツを参考にした長期滞在向け施設「クアパーク長湯」をオープンし、ワーケーション需要を取り込んでいる。

 記者も体験してみたが、部屋が全て一棟建てなのでプライバシーがしっかり保たれていた。室内はWi-Fiや広いワークデスクを完備。水着で入る歩行浴やジャグジーなどの温泉設備に部屋から直接行けるので、仕事の合間に「ちょっとひとっ風呂」なんてのも可能。本格的なコース料理が楽しめるレストランも併設しているが、ちょっと歩けば街中に買い物に出たり食事したりもできる。夜は地元の居酒屋で一杯やるのも楽しそうだ。

 単なる地方や観光地ではなく、ネット環境などが整った温泉地でのワーケーションなら、仕事もはかどり、温泉の効果で健康にもなれて一石二鳥。いや温泉地も助かるのであれば一石三鳥か。

 いつまでも元気で働き続けることが求められる「70歳定年時代」のニューノーマルな働き方になるかも?

宿泊費無料で温泉ワーケーション企業を募集中

 BIGLOBEは温泉ワーケーションの無料体験プログラム(朝夕食付き)に参加してくれる企業を募集している。温泉宿は、秋保温泉(宮城)、湯河原温泉(神奈川)、伊東温泉(静岡)、火の谷温泉(三重)、別府温泉(大分)など全国20カ所。応募は5月17日まで(実施期限は7月30日まで)。詳しくは「ONSEN WORK」のサイトで。

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