日用品の「日本製回帰」がインフレ本格化で進行中 国内で作ったほうが安い状況に
1ドル=130円に乗せるなど急激な円安に加え、原材料費や物流費、人件費の高騰で、輸入に依存してきた日本の日用品は値上げを余儀なくされている。その代表が100円ショップで、低価格・ワンプライスがいよいよ成り立たなくなってきた。
「ダイソー」運営の最大手・大創産業では、300~1000円の高価格帯店「スタンダードプロダクツバイダイソー」の出店を渋谷、新宿、銀座、大阪の梅田や千里、京都といった都市部で拡大させている。
「この店の特徴は、国産をはじめとする良質な日用品をお手頃価格で提供している点です。これまで、円高を武器に人件費の安いアジアの工場で生産したものを、日本国内で販売してきた100円ショップはデフレの象徴でした。それがいよいよ立ち行かなくなり、日本で作ったほうがいいものを安く提供できる状況になりつつあります。今の状態が長期的に続けば、日用品の日本製回帰が進んでいくと思われます」(マーケティングアナリストの渡辺広明氏)
実際、スタンダードプロダクツでは、金属加工で有名な新潟県燕三条のカトラリーや世界的な刃物産地で知られる岐阜県関市の包丁などが手頃に購入できるとあって人気を呼んでいる。
「1000円ほどで販売されている包丁は売り切れ店が続出していて、メルカリでは2000円前後で転売されています。この30年ほどで国内から海外に生産拠点の移転が進んだことで、国内の工場や職人の数自体は減っていますが、日本の洗練された技術は世界的に見てもレベルが高いうえ、機械化が進み、300~1000円といった価格帯でも高品質の製品が作れる状況にあります」(流通関係者)
デフレ時代の勝ち組企業にマイナスの影響も
前出の渡辺氏は日本製回帰は歓迎すべきことと話す一方、それによってデフレ時代の勝ち組企業にマイナスの影響が出てくるという。
「100円ショップの他に、海外で安く生産したものをブランディングして買いやすい価格で日本で販売してきたニトリや無印良品といった会社への影響は小さくないでしょう。食器や小物だけでなく、特に世界的に見てレベルの高い筆記具のジャンルで、日本のいいものを納得感のある価格で販売する流れが生まれつつあるように感じます」
平成デフレで定着した“安いから買う”という消費スタイルに変化が起こりつつある。