がん大国・日本ようやく本腰「緩和ケア」とは何なのか…“放射線&神経ブロック”で痛みにサヨナラ
男性は3人に2人、女性は2人に1人ががんになる。その終末期には強い痛みが待ち受ける。日本は世界有数のがん大国だが、痛みを取り除く緩和ケアは遅れている。その現状を受け厚労省が緩和ケアをより強力に進めるべく動き出した。では、緩和ケアって何なのか。
◇ ◇ ◇
国立がん研究センターは、2019年と20年に約11万人のがん患者の遺族を対象に全国調査を実施。がん患者の人生の最終段階の療養生活を調べている。
今年3月に公表された結果によると、亡くなる1カ月前に「痛みが少なく過ごせた」は47.2%で、「からだの苦痛が少なく過ごせた」は41.5%。半数以上が何らかの痛みを感じている実態が見て取れる。
さらに亡くなる1週間前に強い痛みを感じていたのは28.7%。その理由を探ると、選択式回答では「苦痛に対処してくれたが不十分だった」が28.4%で最も多い。不十分な内容を自由記述で探ると、「医療者は対処したが、薬の効果が切れてしまった」「治療や対処が十分ではなかった」など医師の疼痛管理に問題があることを指摘する声が上がっている。
06年には、がん対策基本法が成立。それを受けて3期に及ぶがん対策推進基本計画では、「がんと診断されてからの緩和ケア」が掲げられているが、がん研究センターの調査からは十分に行き届いているとはいえないのが現実だ。
■厚労省が全医師に周知
そこで厚労省健康局がん・疾病対策課は6月8日付で、「がんの緩和ケアに関する資材の周知について」とする資料を発出した。各都道府県衛生主管部、がん診療連携拠点病院などの院長、さらに日本医師会が対象だ。がん治療の中心となる各地のがんセンターや大学病院はもちろん開業医、都道府県をも巻き込んで緩和ケアを徹底させる方針だ。
なるほど、「痛みへの対応について」と「診断時の緩和ケア」のA4判2枚の資料には、「全ての医療従事者の方へ」と朱で書かれていて、それぞれのポイントを列挙。もう1枚のA4判は「病状、治療方針とあわせて、医療チームからお伝えしたいこと」で、診断時に医師と看護師がサインして患者に渡すものだ。