不起訴処分の「理由」公表の検討を最高検が指示…いったい誰のため?
先日、最高検察庁が、被疑者を不起訴にした理由を公表することを検討するよう全国の各検察庁に指示を出していたと報じられました。
刑事事件の場合、捜査機関が必要な捜査を行った後、事件記録を検察官に送致し、検察官が起訴をするか不起訴処分とするかを決定します(このことを「終局処分」といいます)。
不起訴処分の場合、その理由としては、主に「嫌疑なし」「嫌疑不十分」「起訴猶予」というものがあり、そのうち「起訴猶予」とは、犯罪の事実が明白な場合に、被疑者の年齢や境遇、犯罪の重さや情状、犯罪後の状況などを考慮し、あえて起訴する必要がないと判断されたものです。
不起訴処分の理由については、被疑者であれば、不起訴処分の理由を告知するよう検察庁に請求し、「不起訴処分告知書」を受領することにより確認することができます。一方で、事件に関係ない第三者に対しては、事件によって担当検察庁が公表するかどうかを決定しており、その対応は検察庁によって異なっていました。
今回、最高検察庁が、個別の事件で被疑者を不起訴処分にした理由を公表することを検討するよう指示した背景には、社会的な関心の高さが挙げられるように思います。しかしながら、この対応には疑問を覚えます。そもそも、「嫌疑不十分」「起訴猶予」といった判断は、あくまで一検察官の判断にすぎません。また、「嫌疑不十分」となる場合と「起訴猶予」となる場合の判断基準が明確とはいえません。そのような状況で、各事件の不起訴処分の理由を公表することになれば、必要以上に被疑者や被害者の尊厳を傷つけかねないリスクがあります。
社会の要請に応じ、手続きの透明化を図る、わかりやすい刑事手続きを心掛けること自体が誤りとは思いませんが、必要以上に被疑者や被害者の方を傷つけることがないよう、慎重に判断していただきたいと切に願います。



















