ダム爆破でウクライナの反転攻勢本格化 中国・習近平の「仲介案」は宙に浮いてしまった
ロシア軍の占領下にあるウクライナ南部ヘルソン州のダム爆破は和平機運をまたもブチ壊し、事態の泥沼化を加速させることになりそうだ。侵攻開始以降の民間インフラ被害としては最悪で、深刻な環境汚染も懸念される。
■ダム破壊で4万人超避難
ゼレンスキー大統領は「ロシアの占領軍はウクライナの土地で、ここ数十年で最大の生態系破壊の罪を犯した」と激怒。機能不全の国連安保理でも非難の応酬となった。
爆破により決壊したのは、ドニプロ川に設置されたカホフカ水力発電所の巨大ダム。下流域では家屋が流され、街は冠水。4万人超の住人が避難を余儀なくされている。川沿いのロシア占領地域にある動物園は水没し、300匹の動物がすべて死んだという。
疑惑の目を向けられているロシアのペスコフ大統領報道官は「意図的な妨害行為で、ウクライナ政府の命令で計画、実行されたものだ。その目的のひとつはクリミアから水を奪うことだ」と主張したが、分が悪い。ロシア軍がドニプロ川西岸から昨秋撤退した際、ウクライナ軍の進軍を阻止するため、ダム爆破を試みたとされるからだ。反転攻勢を始めたウクライナ軍は南進してアゾフ海を奪還し、ロシア軍占領下の東部と南部の分断を狙っている。大規模な洪水発生によって、作戦停滞は避けられなくなった。
「ウクライナが反転攻勢の時期に言及せず、沈黙を守ってきた要因のひとつが、中国の習近平国家主席が主導する仲介です。先月下旬に侵攻をめぐる代表団を初めて関係国に派遣して着地点を探っており、ウクライナは進展に期待を寄せていた」(中ロ外交事情通)