部下の妻に恋をして…不適切な関係に焦がれた男の末路。色恋沙汰のスキャンダルの恐ろしさ

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コクハク

羊飼いの末っ子から王になったダビデ

 職場や近所、SNS界隈に現れる「残念な人」、いますよね。実は今から約2000年前から現在に伝わる「聖書」にも「残念な人」がいるのです。

 SNSで聖書を面白くわかりやすく伝える活動を続けている上馬キリスト教会ツイッター部のMAROさんは、世界的なベストセラーの聖書は「人間の残念さの歴史」とし、残念だからこそ救われ、人からも神様からも愛されるのだと解説しています。

聖書のなかの残念な人たち』(笠間書院)より聖書に登場する人たちの「残念」な失態エピソードを一部抜粋・編集してご紹介します。

 ダビデは『創世記』に登場するヨセフと並んで、聖書の中で劇的な下剋上を遂げた人物です。

 羊飼いの末っ子という、当時の社会で最も低い身分からイスラエル王国の王となり、しかも王国の全盛期を築き上げました。

「名君と言えばダビデ! 英雄と言えばダビデ!」というほどに、ユダヤ教においてもキリスト教においても、名君としても英雄としても絶大な人気を誇る人物ですが、しかし、晩年には女性スキャンダルを起こして神様からこっぴどく𠮟られています。

 ある夕暮れ時、ダビデが王宮の屋上を歩いていると、とても美しい女性が裸で水浴びをしているのが見えました。

 これを見たダビデはその女性に一目惚れしてしまい、「なんてきれいな人なんだ! 誰か! 誰か! あの人がどんな人か調べて!!」と、部下に彼女について調べさせたところ、その人はバテ・シェバという名で、ダビデの部下で今は戦場に派遣されているウリヤという人の妻であることがわかりました。

「人妻なのか…しかも僕の部下の妻…うーん、でも我慢できない! あの人を僕のところに連れてきて!!」と、ダビデはその人妻バテ・シェバと「不適切な関係」を持ってしまいました。

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夫をわざわざ呼び戻し…

 バテ・シェバはダビデの子を身ごもりました。ダビデは思いました。

「これはまずい! そうだ! この子は彼女の夫のウリヤの子ということにすれば問題ない! よし! ウリヤを戦場から呼び戻せ! そうすればつじつまが合う!」

 こうしてウリヤは「戦況の報告のため」という建前で戦場から呼び戻されました。

 これで家に帰ったウリヤが妻であるバテ・シェバと「適切な関係」を持てば、お腹の子の父親問題はうやむやになります。ですからダビデはウリヤをねぎらい、優しい言葉をかけ、「今夜は家に帰って奥さんとゆっくりするといいよ」と言いました。

 しかしウリヤは真面目な人だったのでこう答えました。

「せっかくですが、仲間が戦っているのに私だけ家に帰って妻とゆっくりするわけにはいきません!」

隠蔽のために部下を戦死させる

 ダビデは困りました。「これではお腹の子の説明がつかない! かくなる上は…!」。

 ダビデはウリヤに手紙を渡しました。

「よくぞ言った! だったら戦場に戻って、これを戦場のヨアブ将軍に渡してくれる? お願いね」

 ウリヤは戦場に戻り、その手紙をヨアブ将軍に渡しました。そこにはこう書かれていました。「この男、ウリヤを危険な前線で見殺しにして戦死させるように」。

 ヨアブは手紙のとおりにウリヤを危険な前線に送り、そしてウリヤは戦死しました。

 未亡人となったバテ・シェバをダビデは妻としてめとり、これでこのスキャンダルは藪の中となりました。

 ダビデは自分の部下の妻を寝取り、しかもそれを隠すために、その部下をわざと戦死させた、つまり殺したのでした。

神の逆鱗に触れた

 神様はこれを見て非常に怒り、預言者ナタンを通してダビデを𠮟責し、そしてダビデも心からこの過ちを悔い、死ぬまで良心の呵責に苛まれました。

 その上、バテ・シェバとの間に生まれた最初の子は、生まれてすぐに死んでしまいました。 

 さらに他にもさまざまな罰をダビデは負うことになりました。たとえば後にダビデの子であるアブサロムが反乱を起こしたのもこの罪の結果だと言われています。

色恋スキャンダルの恐ろしさ

 現代日本でも、色恋沙汰のスキャンダルで身を滅ぼす人は数え切れません。

 テレビや雑誌は毎日のようにそんな話題で溢れかえっています。それまでにどんなに立派な功績をあげてきたとしても、一つのスキャンダルが致命的な汚点となり、その人の評価を下げてしまいます。

 政治家でも芸能人でもそうですし、それによって会社を辞めなくてはならなくなったような人も、世にはたくさんいます。

 ただ、ダビデはその過ちを心から悔いて、神様に謝罪しました。

 一切の言い訳も自己弁護もせず「どんな罰でも受け入れます」とあらゆる罰を受け入れました。それで神様もダビデから王としての権勢は奪わず、そして後にバテ・シェバとの間に生まれたソロモンを彼の後継者にしました。

 色恋とは恐ろしいものです。

 恋は突然に、予期しないところから現れて身も心も焦がします。熱に浮かされたように、普段ならありえないような行動に人を走らせます。

 そして恋の罪はよっぽど自分の心に注意していなければ誰にでも起こり得ることです。他人事ではありません。

罪を犯してしまったときこそ…

 しかし色恋に限らず、どんな罪でも、犯してしまった以上はそれをしっかりと認識し、悔い、謝罪し、償いを受け入れることが肝要で、そうすればきっといつかゆるしも与えられます。

 汚点は汚点として残り、ダビデのような人の場合は、その汚点がこうして3000年後にまで語り継がれてしまったりもしますが、それでも「名君ダビデ」という大きな評価は崩れ去りませんでした。

 汚点は汚点、功績は功績と分けて評価してもらえます。

 ダビデも罪を悔い、償うことを真摯にしなければ、きっとすべてを失ったことでしょう。

 罪を犯してしまったときこそ、いかにそれを悔い、償うか。それによって世の評価も後世の評価も大きく変わるのかと思います。

書籍情報『聖書のなかの残念な人たち』

書名 : 聖書のなかの残念な人たち
著者 : MARO(上馬キリスト教会ツイッター部)
発売日: 2025年5月26日
頁数 : 288ページ
定価 : 1,980円(税込)
出版社: 笠間書院

(MARO(上馬キリスト教会ツイッター部) )

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