(2)小倉の角打ちで飲む
市場の朝は早い。ひと仕事を終えた人々がほんの1杯か2杯、酒屋の店先でひっかけてから仕事に戻る。そんな光景が大正期からずっと続いてきた。その光景が失われる。来年の早いうちということは、私にとっての赤壁酒店は、これで見納めということになる。先に書いた角打ち特集の取材時、最初に訪れたのが赤壁酒店だった。私にとって角打ちと言えば赤壁なのだ。
あの日、ひとりの老人と隣り合わせた。シルバーワークの仕事の帰りと言ってにこりと笑った。手元を見ると、焼酎の横にデカビタCがあった。チェイサーにしているのだ。
「いつも、その組み合わせなんですか」
と聞く私に、老人、ひどく照れながら言った。
「あの、前回から、はははは」
笑顔が抜群だったご老人、元気だろうか。もう一度会いたい。今年中に小倉を再訪すれば、そんな奇跡に巡り合えるだろか。


















