(31)川を渡って寿司屋で飲む
六郷河川敷を後にして、橋の上から多摩川を見下ろした。夕暮れが迫る水面はトロリとして静かだ。車や人、ときに自転車が橋を渡る。その先は、神奈川県川崎市だ。品川の次の宿場が、川崎である。高度成長期には京浜工業地帯の中心だった。
江戸時代から賑わいのある庶民の街、労働者の街。その濃い雰囲気が。今も残る。
少年野球を見た後、とぼとぼと夕刻の橋を渡った私は、川崎競馬の帰りに寄ってみたことのある界隈で、いかにも庶民的な雰囲気の寿司屋に入った。
カツオがいいですよ。板前のお薦めに従って食べた5月のカツオがうまかった。ビールで始めて、新潟の地酒に移り、2杯、3杯とやるうちに、昼間見た少年野球の練習風景が蘇った。隣り合わせた客と競馬のGⅠ競争の話で盛り上がりながら、心の奥でグローブの匂いを求めていた。
ホッキ貝の焼き物がうまい。アジ、コハダの握りもいい。
酒は「吉乃川」。長岡の老舗蔵の酒が、止まらなくなった。



















