脳のエキスパート・篠原菊紀特任教授が提唱する「スマートPLAYスタイル」のススメとは

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「ギャンブル依存症」を病気として捉え強調するのは適切ではない

 2025年5月、遊技業関連企業による団体・一般社団法人日本遊技関連事業協会(以下、日遊協)が主催する「ぱちんこ依存問題」勉強会が東京・京橋で開かれた。そこで講師として登壇したのが、公立諏訪東京理科大学の篠原菊紀特任教授。健康科学、脳科学の見地から約四半世紀にわたり依存問題を研究してきた専門家だ。篠原特任教授が提唱する「スマートPLAYスタイル」のススメとは。

  ◇  ◇  ◇

 ギャンブル等依存症問題の“関心”と理解を深めるために、毎年5月14日~20日は国から「ギャンブル等依存症問題啓発週間」に定められている。

 ギャンブル等依存症対策基本法が施行されたのは2018年と、意外にも歴史は浅い。それよりも20年以上前から「快感・楽しさ」をキーワードに依存問題のほか様々なアプローチを重ねる脳のエキスパート・篠原菊紀教授に、まずはギャンブル依存症という名称についてうかがった。

篠原 そうですね、ギャンブル依存症という名称は日本独特です。世界的にはgambling disorder(ギャンブリング障害)でわが国での訳語はギャンブル行動症です。「ギャンブルの問題」というより「ギャンブルの仕方」の問題というニュアンスです。まず、ここを踏まえましょう。次にWHOによれば、ギャンブリング障害と危ない遊び方(hazardous gambling or betting)を区別せよ、と言っています。混同してはならないと。前者は精神的な障害で、後者は健康問題、肥満運動不足と同列です。日本では何でもかんでも、「ギャンブル依存症」と呼びがちですが、やたらに病気として強調するのは適切とは言えません。

快感に関わるドーパミン分泌が認知症を抑えうる可能性がある

 一部マスコミの過度な煽りによりパチンコの負の部分ばかりが強調されてきたが、脳科学の見地に立つと、パチンコ好きがパチンコを打つことは、むしろ推奨されるべき側面もあるという。

篠原 趣味をはじめとする余暇活動がアルツハイマー病や認知機能低下予防に役立ちうることは、200万人を超えるデータのまとめから報告されています。依存界隈ではすべての元凶のように言われる快感に関わるドーパミン分泌が、認知症を抑えうる可能性があるのです。アルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβやタウたんぱくが凝集する(凝集することで毒性を発揮する)のをドーパミンがやっつけてくれることが報告され始めています。遊びや楽しさが大事なんですね。

 では、ドーパミンは具体的にどのタイミングで放出されるのか。

篠原 パチンコ遊技中だと、実報酬(大当たり時)だけでなく、報酬予測(高信頼度予告の発生)、報酬期待(報酬予測から実報酬までの間)、の3カ所でドーパミンが出ます。お店に行こうと思い立った時も分泌されます。ここで大事なのは、実報酬時の脳活動では、報酬予測と実報酬の差を計算して、ドーパミンが放出されることです。たとえば、確定演出が出た後のあたりは「まぁ当たるよね……」となってしまうのでドーパミンはほぼ放出されません。ドーパミン神経には飽きる、嫌になる仕組みも仕込まれているのです。だから、ドーパミン放出自体が危ないかのような依存界隈の説明は間違いです。

「ギャンブリング障害」と「危険な遊び方」を明確に区別する

 さて、ここで「スマートPLAYスタイル」について伺おう。

篠原 繰り返しになりますが、「ギャンブリング障害」と、その前段階「危険な遊び方」は明確に区別してください。世にあふれるチェックリストなどで、「依存症かも?」と思った程度ではせいぜい「危ない遊び方」です。遊び方の修正が十分可能です。ですから、世界でのいわゆる依存症対策の本線は、健全に遊んでいる人を健全に止める、危ない遊び方の人を障害化させない、です。その際、役に立つのが「スマートPLAYスタイル」。アメリカで開発されたpositive play scaleをぱちんこに援用し、遊技量の制限よりもこちらの順守が相当に有効であることを研究的に確かめた指標です。くわえて、2024年に我々が日遊協と協力して454人の高齢パチンコユーザーを調査したところ、投資の上限金額を決めて遊ぶ『決めパチ』、時間に余裕がある時に遊び、人との約束を破らないようにする『よゆパチ』、勝っても負けても正直に周りの人に話す『シェアパチ』といった、スマートPLAYスタイルを励行している人ほど頭の働きがよい(認知機能が高い)ことも明らかになっています。

 ユーザーが3カ条を守るのはもちろんだが、それ以上に周囲の非パチンコユーザーもただ無げにとがめるのではなく、正しい遊び方を理解し寄り添うことが、ギャンブリング障害化を防ぐうえで重要になりそうだ。

篠原 パチンコが好きで長く打っているプレーヤーは、おおむね健全に遊んでいます。そういう人にとって、パチンコを打つことはむしろ脳によろしい。実際、70代パチンコプレーヤーの認知機能は一般より高かった。できれば、ただボーッと打つだけではなく、積極的に脳を働かせて、自己コントロールし、いっぱい当てて、最後に振り返った時に「いいパチンコライフだったな」と思えるようにしてもらえたらと思います。私もそれを目指しています。

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