猫の慢性腎臓病に期待の新薬をAIM医学研究所が承認申請 その効果を獣医師に聞いた
猫はがんと並んで、慢性腎臓病で亡くなることがよくあるが、待望の治療薬が実用化目前だ。4月には、薬の開発を主導するAIM医学研究所が農林水産省に製造販売の承認申請を行っている。どれくらいの効果があるのか。
日本生物科学研究所所長の杉浦勝明氏らは2022年、全国の動物病院40施設を対象にカルテデータから犬と猫の寿命と死因を分析。それによると、猫の寿命は12.3歳で、猫の死因は泌尿器疾患が最多の29.4%。がん20.3%、循環器疾患11.8%と続いた。泌尿器疾患とは主に慢性腎臓病だ。
杉浦氏らは死因となる病気を取り除いた場合の平均寿命についても調査した。猫では、泌尿器疾患がなければ1.6歳、がんがないと1.0歳、それぞれ平均寿命が延びると推計された。
この研究からも、慢性腎臓病が猫の体をむしばんでいることが分かるだろう。その致命的な病気がなければ、12歳の寿命が2年近くも延びるというから、慢性腎臓病の治療は愛猫家にとって期待が持てる。
そんな夢の薬を開発したのが、AIM医学研究所の宮崎徹所長だ。1999年、重要な薬理作用を担うタンパク質を突き止め、AIMと命名。スイスや米国などの研究機関を渡り歩きながら、AIMがいろいろな病気に関係することを明らかにしつつ、2006年に東大大学院医学系研究科に移籍。東大で猫の慢性腎臓病を劇的に改善することを発見した。
■末期の猫に静脈注射で投与すると生存率82%
どんな薬なのか。獣医師でカーター動物病院院長の片岡重明氏に聞いた。
「AIMは、多くの動物の血液中に存在するタンパク質です。生命活動によって、炎症を引き起こす分子をはじめ“ゴミ”のようなものが発生し、それがたまると、さまざまな病気の原因になります。ところが、“ゴミ”があっても、免疫細胞は“ゴミ”として認識できません。AIMは、“ゴミ”に貼るシールのようなもので、シールが貼られると、免疫細胞は“ゴミ”として認識できるため、“ゴミ”が掃除されて、病気にならずに済むのです」
それが猫の腎臓病とどう関係するのか。宮崎氏は、猫は先天的にAIMが機能しないため、“ゴミ”が腎臓にたまりやすいことを発見し、AIMを静脈注射で投与することで慢性腎臓病が劇的によくなり、寿命が延びることを研究している。
たとえば、猫でも人間でも腎機能が正常の10%以下に低下すると、アンモニアや尿素などの毒素や老廃物が排出できず、体にたまっていく。それが慢性腎臓病の末期に生じやすい尿毒症だ。人間では、人工透析によって治療する。人間の場合、透析の医療費は1カ月で約40万円(自己負担額は一般的な所得で同1万円)と高額なため、猫では点滴で毒素を希釈したり、解毒の薬剤を注入したりして治療するのが中心だ。
宮崎氏らは臨床試験に先立つ研究で、末期に近い慢性腎臓病の猫11匹に培養したAIMを投与した結果、投与から1年経過しても尿毒症を発症せず、何と生存率は82%に上ったという。投与しなかった15匹は、12匹が尿毒症を発症し、生存率はわずか20%だったというから、効果は歴然だ。
AIMの効果は、猫の腎臓病だけでなく、人間の腎臓病や脳梗塞、肝臓がん、脂肪肝、肥満などでも認められていて、人間の腎臓病治療薬の開発も進められている。これらの薬が実現すれば、ブラックジャックもビックリだろう。まず猫の慢性腎臓病薬については、早ければ年内にも認められるとみられている。

















