大阪・関西万博で見えた「未来社会」課題(中)大阪市の「全面禁止条例」が招いた混乱
全面禁煙の方針撤回は5月26日に発表され、6月28日から会場内に新たに設けられた喫煙所の利用が始まった。
一方、万博の開催に合わせて路上喫煙の全面禁止を打ち出した大阪市では、市民や観光客から不満の声が上がっている。
大阪市ほどの規模の大きな自治体での全面禁止は、政令市では国内初だが、態勢が整っているとは言い難いのが実情だ。市は規制強化と同時に公共喫煙所の設置も進めるとし、約180カ所の喫煙所を設置。さらにパチンコ店などの喫煙所を無償開放することで計約300カ所を確保したというが、絶対数が足りていないという指摘は根強い。
例えば、同様に路上喫煙が全面禁止の東京都港区では、総面積約20平方キロメートルに対し、指定喫煙所は今年10月時点で区内に110カ所が設置されている。総面積がおよそ10倍ある大阪市で300カ所はあまりに少ない。
4月から大阪府の条例施行で喫煙可能な飲食店が大幅に減ったこともあり、かえって路上喫煙やポイ捨てが増えると懸念する声もある。条例について知らない観光客なら、なおさらだろう。
高く理想を掲げても実効性が伴わなければ意味がない。実態に合わせて柔軟な対応をした万博協会のように、大阪市も全面禁止を押し付けるだけではなく喫煙環境の整備が必要ではないか。 (あすにつづく)


















