BAT(ブリテッシュ・アメリカン・タバコ)の未来戦略 世界市場は 日本市場は…

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キーワードは喫煙による健康リスクの低減を目指す「たばこハームリダクション」

 加熱式たばこ「glo(グロー)」を柱に成長を続けるBATジャパン(ブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパン)は、BATグループの一員として、喫煙による健康リスクの低減を目指す「たばこハームリダクション」の推進に取り組んでいる。

 業界をリードする同グループはスモークレスな世界をいかにして築き上げようとしているのか。世界市場および日本市場における現在の活動と今後の戦略について、2人のキーパーソンを直撃して話を聞いた。

 BATグループは、「A Better Tomorrow(より良い明日)」を築くという企業パーパスを掲げている。20歳以上の消費者のたばこの害を軽減する「たばこハームリダクション」を推進するスモークレスな代替製品の提供に力を注ぎ、「より良い明日」の創造を目指している。

「喫煙がもたらす健康リスクの大部分は、ニコチンではなく、紙巻きたばこの燃焼に伴って発生する有害物質にあることは広く認められています。このリスクを回避するにはたばこ製品を使用しないことだと理解していますが、喫煙を選択し続ける消費者がいる中では次なる最善策をとらなければなりません。そこで、健康リスク低減の可能性がある非燃焼式のスモークレス製品を取り揃え、紙巻きたばこからの切り替えを推進しているのです」(BAT COO、ヨハン・ヴァンダーミューレン氏)

グローバルで展開するスモークレス製品 加熱式たばこ「glo(グロー)」、オーラルたばこ「VELO(ベロ)」

 グローバルで展開するニコチンを含む主なスモークレス製品は、加熱式たばこ「glo(グロー)」、オーラルたばこ「VELO(ベロ)」、電子タバコ「Vuse(ビューズ)」の3つ。日本では加熱式たばことオーラルたばこを扱っている。

「グローバル市場において、2035年までに売り上げの50%をスモークレス製品が占めることを目標としています。また、2030年までにスモークレス製品の消費者を5000万人にすることを目標としており、2024年時点で2900万人以上となっています」(ヨハン氏)

 BATグループでは20歳以上の喫煙者のスモークレスな製品への移行を推進するために、さまざまな取り組みを行っている。

 そのひとつが、昨年発行された「Omni(オムニ)」。これは、過去10年間に作成された、たばこの害の軽減「たばこハームリダクション」に関する世界的なエビデンスをまとめたものだ。

「Omni掲載の一例を挙げると、スウェーデンのケースは非常に価値あるエビデンスです。スウェーデンでは約20年前、喫煙率が20%ほどでした。そこから国が『たばこハームリダクション』を政策として取り入れ、紙巻きたばこの代替品として無煙たばこを市場に導入。併せて公共の場所での喫煙を制限するなど施策を行いました。結果、20年後には、喫煙率が5%台まで低下したのです。この喫煙率はヨーロッパのEU27カ国の中で最低水準。また、肺がんの罹患率は、EU諸国の中で最も低くなっています」(ヨハン氏)

「Omni」にはこういった外部からの情報に加えて、BATグループの8つの研究開発施設で1750人の研究員によって行われた「たばこハームリダクション」に関する研究や調査などがまとめられている。

「科学的裏付けのあるスモークレスな製品の提供を通じて、『より良い明日』を構築していくことを、私たちは使命としているのです」(ヨハン氏)

ニーズに応えた革新的なデバイスにスティック

 加熱式たばこ「グロー」は、2016年に世界に先駆けて日本で発売された。以来、イノベーションを積み重ね、進化を遂げ続けている。

「『グロー』の製品開発は、日本の20歳以上の消費者のインサイト(潜在的なニーズ)にもとづいています。デバイスはもちろん、たばこスティックも消費者の意向に沿うものかどうかを最重要課題としているのです。何より大事にしているのが、高品質なものをお届けするということ。日本の皆さんが求めるクオリティーを正しく理解し、開発を進めて投じています」(BATジャパン社長、エマ・ディーン氏)

 昨年8月に発売された新デバイスのスタンダードモデル「グロー・ハイパー」や、たばこスティックに新搭載された「スティックシール・テクノロジー」は、その代表例といえるだろう。

「『グロー・ハイパー』は、デバイスを手に持ったときの直感的な感触の良さ、加熱温度など機能面の充実による深い味わい、各種装置の使いやすさやスタイリッシュなデザインと、あらゆる要素にこだわりました。お求めやすい価格での提供ということもあり、日本の消費者の皆さんに大変人気となっています。『スティックシール・テクノロジー』はスティックの先端をシールで密閉し、デバイス内にたばこ葉が落ちないようにするという革新的なものです。頻繁な掃除を不要とするため、衛生面を重要視する日本の皆さんに好評で、喜びの声をいただいています」(エマ氏)

 加えてフレーバーについても、日本の消費者の意向を重要視して開発。ニーズに応じたラインアップを取り揃えている。

「ヨーロッパと比べると、日本ではメンソールの人気が際立っています。メンソール系のフレーバーは全体の半分を占めるほどです。直近でいえばベリー系のフレーバーがすごく伸びています。強いフレーバー感と、一貫した味わいを求める傾向が強いですね」(エマ氏)

認知訴求のキャンペーンは日本ならではの趣向を

 一方、製品の認知訴求にはキャンペーンが欠かせないが、ここでも日本を意識した趣向を取り入れているそうだ。

「たとえば、季節性をキーワードにしています。日本には四季があり、季節の移り変わりによって人の気持ちも変わり、新たな体験を求めたりするでしょう。そういった要素をキャンペーンに取り入れています。昨年12月に群馬県川場スキー場、今年2月に北海道札幌市の『さっぽろ雪まつり』の会場内に『グロー』を体験できる喫煙ブースを設け、多数の来場者でにぎわいました。また、2月は『グロー・ハイパー・プロ』の『さっぽろ雪まつり』限定カラーデバイスを会場で予約発売し、瞬く間に完売となりました。第2弾として鮮やかな緑の「グロー・ハイパー・エメラルドグリーン」も発売し、3月には桜をイメージしたグロー・ハイパー・プロのデバイスも展開しています。このような季節感が感じられる『Live Life in Color』キャンペーンを今年の中旬まで展開していきます」(エマ氏)

 日本のたばこ市場における加熱式たばこのシェアは今年、過半数の50%を超えるといわれている。日本に加熱式たばこが登場して約10年という短期間で、紙巻きたばこのシェアを抜くことは秒読みの段階だ。

「日本は私たちにとって非常に重要な市場です。今後も、スモークレスな世界をつくるという信念にフォーカスしながら事業活動を行っていきます」(エマ氏)

 最後にキーパーソンの2人からメッセージ。

「日本の加熱式たばこのシェアは50%を超えそうですが、一方で紙巻きたばこを使用している消費者の皆さんはまだいらっしゃいます。加熱式たばこなどスモークレスな代替製品に移行していただくよう、さまざまな形で促していければと思っています」(ヨハン氏)

「『グロー』は、日本の消費者のことをもっともよく理解しているブランドです。デバイスやたばこスティックについて、高品質なものをお届けするというのは、私たちのコミットメントです。日本の皆さんにご満足いただけるものを提供できれば、世界中どこの国の皆さんにもご満足いただけるでしょう」(エマ氏)

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