“現金主義”外食チェーンは増税を機にキャッシュレスに転換するか
消費税増税にともない、キャッシュレス決済によるポイント還元が来年6月まで実施されている。外食チェーンの中にはクレジットカードや電子マネーが利用できないところも少なくないが、増税を機にこうした外食チェーンの現金のみの決済は変わっていくのか。
「単価が安く利幅の小さい商品を提供しているチェーン店は薄利多売なため、クレジットカードの手数料はコストとして大きくのしかかってきます。即金の現金に比べて資金回収も良くないため、商売上、現金決済のみのチェーンも存在しましたが、2020年に開催される東京五輪を機に外国人旅行者のさらなる増加が見込まれるなか、旅行客の多い都市部を中心にキャッシュレス化に踏み切るところが増えていくと思います」(外食チェーン関係者)
まず、国内外に1460店舗以上あり、ミラノ風ドリアなどで知られるイタリアンレストランのサイゼリヤは、10月からの消費増税の際も据え置き価格で商品を提供している(ボトルワインなどを除く)。これまで商業施設内の店舗を除き、現金決済のみを貫いてきたが、ここに来て決済に関して2つの試みを行っている。
■サイゼリヤの一部店舗でおつりがAmazonギフト券で受け取れる
まず1つ目が、都内の一部店舗でクレジットカードと交通系電子マネーでの決済を実験的にスタートさせたことだ。
「今後のキャッシュレス化対応について現在検討中ですが、来年のオリンピックの時期に首都圏などでの展開を考えております」(サイゼリヤ広報)
2020年以降、順次拡大していくとのこと。そして、もう1つは支払いのキャッシュレス化ではないが、現金払いのみの一部の店舗で、おつりに対して2%増額した分をAmazonギフト券で受け取れるというものだ(10月25日現在、都内6店舗で実施)。
例えば、1回の飲食代1000円を5000円で支払い、おつりの4000円に2%増額しした4080円分のAmazonギフト券が受け取れる。対象となるのは、飲食合計金額が税込200円以上で、おつりが9800円以下のケースのみ。こちらのサービスに関しては、今後の計画は今のところ未定とのこと。
交通系電子マネーが全店で採用されていないのが残念
そして、全国に176の店舗展開をしているコーヒーチェーンのカフェ・ベローチェも現金での支払いのみを貫いてきたが、消費税増税を機に変わった。
「10月1日からVISA、MASTERのクレジットカード、楽天Edy、iDの電子マネーで決済できるようになりました。交通系電子マネー(福岡県内の一部店舗のみ対応)は、今後お客様のご要望に応じて検討していきます」(シャノアール経営企画室広報)
今のところキ選択肢が少なく、利用者の多い交通系電子マネーの利用拡大は要検討とのこと。
最後が大阪の庶民の味、串カツを手軽に食べられることで人気の串カツ田中。国内外に265店舗を展開しているが、そのうちクレジットカードに対応しているのが24店舗、コード決済に対応しているのが5店舗(赤坂店のみ両方対応)と、一部の店舗を除き、支払いは現金のみの外食チェーンだ。今後の対応について問い合わせたが、期日までに回答が得られなかった。そこで、外国人客も多く訪れる串カツ田中のある店舗で店員に尋ねると、「今のところ、キャッシュレス化する予定はないですね」とのこと。
一部店舗でのキャッシュレス化、順次キャッシュレス化とチェーンによって対応は異なるが、来年のオリンピックを機にさらなるインバウンド(訪日客)の増加が見込まれる中、これまで頑なに現金主義を守ってきたチェーンも、キャッシュレス対応をせざるを得ない状況になりそうだ。
(取材・文=伊藤洋次)