オフィス内装“なんちゃって社長”七転び八起き奮闘記<後編>

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エス・ビルド 代表取締役 澤口貴一さん(後編)

 オフィス専門の内装工事会社として創業以来17期連続増収を達成するなど業績は右肩上がり。業界注目の企業も、最初から順風満帆だったわけではない。むしろ逆だ。

 トップの出発点は半ばだまされ、たったひとりで始めた元休眠会社の社長。パソコンの訪問販売や広告宣伝カーなどさまざまなことをしたが、うまくいかず、唯一業績を上げられたオフィスの内装工事に活路を見いだし、ここまで成長してきた。年間施工実績は2000件以上、年商は20億円を超える。成功の秘訣を語ってもらった。

「そもそもオフィスの内装工事業は景気に左右されにくい業態だということがあります。景気が良い時はお金をかけたクリエーティブな案件が増え、景気が悪い時は不要になったオフィスを壊す工事、いわゆる原状回復工事が入り込むからです。今のようにオフィスのテナントがどんどん減っている状態でも、その間にビルの共用部分の改修をしたいという話が結構来ています。緊急事態宣言で一時は工事の中止や延期を言い渡されたりして収入源が絶たれるかと思いましたが、それ以降は立ち直り、11月は昨年度の同じ時期と比べて倍以上の売り上げと好調です」

 さらに同社ならではの施策も特筆に値する。1つ目は徹底した〈分業〉と〈効率化〉だ。

「私がお客さまの立場だったら、一番嫌なのが仕入れ先の営業マンに電話がつながらないこと。あるいは現場が立て込んでいて見積書は3日後になるなどと言われることです。そこで当社では営業と現場監督業を完全に分け、営業マンが現場に行くのは必要最低限でいいとしました。さらに営業マン1人に専属のアシスタントを配置。日常的な事務仕事はそのアシスタントが担うようにしたら、営業効率が格段に上がりました」

社員選抜による「いいね!プロジェクトS」とは

 効率化の象徴は〈自社便〉だ。通常、内装工事用の資材は現場スタッフがトラックに積んで運ぶのが通例。しかし、そのためには朝早く倉庫に行き、資材を車に積み込まなければならない。

「例えば朝8時半に現場に行くには、遅くても朝7時には倉庫に行っていなければならない。その1時間半が無駄だと思ったんです。そこで資材運搬専用にトラックを毎日運行。何時に何をどの現場に運んで欲しいと予約を入れれば、現場監督は手ぶらで移動できるのです。うちの社員はほとんど現場まで電車通勤ですよ。作業着は現場で着替えればいいので、スーツでの通勤だって可能です」

 そして成功の秘訣、2つ目。それは〈社員が会社の目標を考える〉だ。

「実は当初、我が社は個人商店の集まりのような会社だったのです。つまり営業マンが自分の力で仕事を取ってきて、いくら利益をあげたから給料はいくらという感じ。しかし、それでは後進が育ちません。できる営業マンはすぐ独立するのも問題で、だからこの業界では、年商3億円を超える会社が極端に少ないのです。そこで6年前に当時の全幹部を集め、個人商店の集まりじゃなく〈企業〉になろうと訴え、そのためには従業員が納得できる会社の経営目標を立て、それを達成するために全員で努力していこうというプロジェクトを立ち上げたのです」

 その名も、SNSの“いいね!”ボタンと社名をもじって「いいねプロジェクトS」。年に1回全社員から選抜された10人が集まり、その年の経営目標から福利厚生などの社内制度、研修方法まで多岐にわたった内容を決める。どう実現するかも、澤口社長は一切口を出さないという。

「試しにやらせてみたら、最初の3年で4億円ほど売り上げが伸びました。これは我が社の文化として、今後も継続していきたいと考えています」

 既成概念にとらわれず、おかしいと思ったことは是正し、いいと思ったことは積極的に取り入れることで業績を伸ばしてきた。コロナ禍によるオフィス縮小という未曽有の危機に対しても、「大きいオフィスが小さくなるだけで、オフィスがなくなることはない。地方に移るのなら、私たちも地方に出向くまでです」と、決してひるむことはない。=おわり

(聞き手=いからしひろき)

▽澤口貴一(さわぐち・たかいち)1978年、長野県生まれ。京都産業大学卒業後、オービックオフィスオートメーション入社。1年目で目標達成率435%を叩き出し、社内指折りの営業マンに。2002年、取引先企業に転職するも倒産。03年、その企業が持っていた休眠会社を引き継ぎ大阪で起業。04年、エス・ビルドに社名変更し、オフィスの内装工事に特化。創業以来17期連続増収を果たし、年商は20億円を突破。19年にリリースした資材計算ソフト「建築の電卓」が国内で大手企業はじめ約170社で導入。2つの国内特許も取得済みで、人件費と資材ゴミ削減に効果的と評判。

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