カルロス・ゴーン被告、逃亡の果てに待ち受けていたレバノンでの過酷な生活
(現代イスラム研究センター理事長/宮田律)
日産自動車元会長の・カルロス・ゴーン被告(67)が英BBCのインタビューに答えた記事が、7月14日に配信された。そこには、日本での拘留が数カ月にわたり、保釈後に自宅に置かれても24時間監視の下に置かれ、裁判の開始の時期も期間も不明で、刑期が最長で15年にも及ぶ可能性があったことを述べている。「(日本では)弁護士を雇う権利もなく、通訳も付けられずこちらが理解しているかは気にされません」などと、日本の司法制度を中傷するような発言もあった。
ゴーン被告はレバノンで自由で、満ち足りた生活を夢想したのだろう。しかし、レバノン経済はますます苦境に陥り、日本の刑務所よりも過酷な状態になりつつあると言っても過言ではない。
■国民の半数以上が貧困ラインを下回る
6月初頭に世界銀行は、レバノンの経済危機は19世紀半ば以来世界で最悪の3本の指に入るほどのケースで、さらに悪化するという見方を明らかにしている。世界銀行によれば、2020年のインフレ率は84.3%、21年の実質GDPはマイナス9.5%と予測した。2019年以来、レバノンの通貨ポンドは90%も価値を下げ、石油や食料、医薬品など生活必需品の輸入もまったく思うに任せない状態になっている。経済危機以前に650ドルほどあった60代男性の月給が50ドルになったというケースもあるほど、人々を貧困状態に置くようになり、実に半数以上のレバノン国民が世界銀行が設定した貧困ライン(1日あたり1.90米ドル)よりも下の生活を送っている。