米国旅行で実感…サンフランシスコ中心部で進む空洞化と薬物汚染の深刻
一方、サンフランシスコでは、こうした利便性の裏で街の空洞化が深刻で、目抜き通りは空き店舗だらけであった。コロナ以降定着したリモートワークがオフィスへの通勤習慣を変え、AmazonやDoorDashなどの宅配サービスが普及した。人々は家賃の安い郊外に引きこもり、必要なものがあればクリックするだけで済む生活を選んでいるのだ。街の中心地から生活者が消えたのである。
2025年の数値では、市内中心部の小売店舗空室率は22.8%に達している。パンデミック前の水準(3.5%)からは約7倍に跳ね上がった。市内のショッピングモールは空室率が50%を超え、所有者がローン支払いを放棄し、競売にかけられるケースも少なくない。ホームレスの増加とドラッグ汚染も深刻だ。
地元関係者が語るには、「一部エリアには薬物中毒患者があふれており、市当局も再生不可能と投げ出したほどである。大手スーパーのWhole FoodsやCVSといったチェーン店は、従業員の安全が確保できないという理由で撤退を余儀なくされた側面もある」という。
行政は空き店舗税やポップアップ支援策など、再生に向けた施策を打ち出しているが、経済の根本的な構造変化と治安回復という二重の課題解決は簡単ではない。テクノロジーの先に待つのは豊かさか、それとも孤立か。進歩と崩壊が共存するサンフランシスコで、我々はどこへ向かっているのか考えさせられた。
(小野悠史/ニュースライター)