崩れた圧勝皮算用 安倍3選という「終わりの始まり」<上>
露出をこれだけ抑えても隠し切れなかった無能と詭弁の見苦しさ
議員票は安倍晋三329票、石破茂73票。党員票は安倍224票、石破181票。合計553票対254票――。
結果が読み上げられた瞬間、会場となった党本部8階ホールに「おおっー」とどよめきが起き、3選を果たしたのに安倍首相の表情は固まったまま、笑顔はなかった。安倍は周囲に座る陣営の議員に握手を求めるも、心ここにあらずの様子で、動揺の色がアリアリだった。
20日投開票された自民党総裁選。「焦点」は石破元幹事長が200票以上取れるのかどうか、だった。200票なら“ポスト安倍”の目が残り、200票未満なら政治生命を失う。ところが、それを50票以上も上回ったのだから、安倍陣営が呆然となるのは無理もない。特に、「4割取れば大健闘」とされていた地方の党員票で、石破に45%も奪われたのだから衝撃だったに違いない。
安倍圧勝の皮算用はもろくも崩れ、この3選が、安倍政権の「終わりの始まり」となることがハッキリした。
予想外の石破善戦は、安倍本人の身から出たサビだ。「拉致問題を解決できるのは安倍政権だけだと私が言ったことはございません」「私は一度もトリクルダウンとは言ったことがありません」――。討論会での、これらの発言に多くの国民・党員は唖然としたはずだ。「腹心の友」の加計理事長とゴルフや会食を重ねていたことを問われると、「ゴルフに偏見を持っておられる。テニスならいいのか、将棋ならいいのか」と逆ギレ。質問を的確に理解する能力もないことがバレてしまった。
安倍陣営のベテラン議員はこう言った。
「先週金曜から3連休にかけてテレビで討論会を見た支援者から、『安倍さんひど過ぎるね』という反応が寄せられ、これはマズいと思っていました」
実際、テレビに出れば出るほど、露出すればするほど、安倍は票を減らしていった格好だ。
外交を理由にするだけでなく、北海道地震まで“利用”して総裁選日程をわずか6日間に短縮、石破との論戦から逃げまくったのに、それでも詭弁を弄する見苦しさや無能さは隠せなかった。
「党員は国民世論に近いと言いますが、世論以上に地方経済の今後や来年の参院選への影響を考えています。政治的意識の高い党員が、石破票、つまり『安倍NO』の票を投じることで、『安倍1強でいいのか』という良識を示したと言えます」(政治ジャーナリスト・鈴木哲夫氏)
地方の反乱が起きたということだ。安倍1強は音をたてて崩れ始めている。