クルーズ船14日間「監禁地獄」乗客乗員3700人の不満と不安
「感染拡大を防ぐため、皆さまにはご自身の客室に戻り、待機をしていただきますよう、お願い申し上げます」――。5日早朝、横浜港沖に停泊中だった「ダイヤモンド・プリンセス」の船内アナウンスで状況は一変した。
3日、クルーズ船に乗船していた香港の80代男性が、新型コロナウイルスに感染していたことが判明。これを受け、厚労省は男性との濃厚接触者など計273人分の検体を採取。5日、31人分の結果が判明し、10人が感染していることが分かった。6日朝、新たに結果が判明した71人のうち10人が陽性だと確認された。これにより、日本人約1200人を含む乗客乗員約3700人は今後、少なくとも19日までの14日間、客室内で「監禁生活」を余儀なくされることになった。船は6日朝、横浜市の大黒ふ頭に着岸。乗客乗員に食料などが補給された。
当初は4日夜にも自宅に戻れるはずだった。新たに10人の感染者が判明したことで、乗客は不安を強めている。
「用意していた高血圧の持病薬がなくなりそうだと話す人や、インスリンが必要な糖尿病の患者もいます。飛行機での旅は無理だが、客船ならと参加した高齢者もいました。とにかく突然の事態に皆、困惑しています」(男性の乗客)
何より、狭い部屋から一歩も出られないことに不満を募らせているという。
「部屋から出ないように」と念を押され、監視するかのように乗員が廊下に立っているそうだ。デッキがある部屋はまだ「マシ」だが、開閉できない円窓や窓すらない客室もあるという。
「心配なのは乗客に高齢者が多いことです。14日間も閉じ込められたら、健康な若者だって心身がおかしくなる。高齢の方が耐えられるのでしょうか」(前出の乗客)
しかも予定通り14日間で下船できればいいが、もし新たな感染者が見つかったら、そこからさらに隔離期間が延びる可能性もある。14日間も閉じ込められたら、どうなってしまうのか。
「ゴールが見えない時には、人は無気力になるか、攻撃的になるかです」と、船医経験のある心理学博士の鈴木丈織氏がこう続ける。
「多くの場合、自己防衛本能が働き、暴力的になります。『船に乗らなければよかった』と自分を責めているうちに被害者意識が強くなり、怒りの矛先は他人に向けられます。何で見張られないといけないのかと不満がたまり、部屋から出ようとし、止めに入った乗員に食ってかかることも考えられます」
乗員乗客を含め、船に残されたのは外国人が多いことから、事態はさらに複雑化することも。
「『高い部屋の客からサービスをしろ』とか、『ここは日本なんだから日本人を優先しろ』などと一気に差別化が進み、あちこちでトラブルが起こるかもしれません。そうなると、かなり危険な状態になります」(鈴木丈織氏)