小林節
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小林節慶応大名誉教授

1949年生まれ。都立新宿高を経て慶大法学部卒。法学博士、弁護士。米ハーバード大法科大学院のロ客員研究員などを経て慶大教授。現在は名誉教授。「朝まで生テレビ!」などに出演。憲法、英米法の論客として知られる。14年の安保関連法制の国会審議の際、衆院憲法調査査会で「集団的自衛権の行使は違憲」と発言し、その後の国民的な反対運動の象徴的存在となる。「白熱講義! 日本国憲法改正」など著書多数。新著は竹田恒泰氏との共著「憲法の真髄」(ベスト新著) 5月27日新刊発売「『人権』がわからない政治家たち」(日刊現代・講談社 1430円)

「教育の充実」に改憲は必要ない 法律と予算で実現できる

公開日: 更新日:

憲法改正問題を真面目に考えよう(6)

 2018年の自民党改憲4項目の4【教育の充実】は、現行憲法の26条に3項を新設して、「国は、各個人の経済的理由にかかわらず教育を受ける機会を確保することを含め、教育環境の整備に努めなければならない」と定めると提案している。

 各人が、その生まれ(つまり親の地位と経済力)にかかわらず、自分の好みと能力を生かして教育を受けて人生を前進して行けることは、幸福追求そのもので、これが人権の本質である。だから、現行憲法26条1項が「均しく教育を受ける権利」を保障し、2項が「義務教育の無償」を保障していることは、階級制度が存在していた明治憲法と決別するために歴史的意味があった。

 しかし、現行憲法の下で70年以上も過ごしてきた今日、「教育の充実」の前提として憲法改正を行う必要など全くない。

 現に、2009年からの民主党政権時代に、高等教育無償化の手始めとして高校の無償化が実施された。そのために、国会はその支給の根拠になる法律を制定し、その財源として予算を承認した。それだけでできたではないか。

 小泉・竹中政権以来の新自由主義(自己責任)という方針の下で、大学で学ぶことは自分の価値を高めることだから、その費用は自分で負担すべきだとして、大学生は学費ローンに苦しめられるようになった。この政策を推進している自民党が、「経済的理由にかかわらず教育を受ける機会を確保する教育環境の整備に努める」と憲法に書き込むと提案するとは、まるで冗談のような話である。つまり、学生の経済環境を整備したいならば、まず、1回の改憲手続きに必要だという800億円の税金で返還不要な奨学金の予算を増額することこそが急務であろう。

 なお、この「教育環境の整備に『努めなければならない』」という文言は、「政治的努力目標」の表現で、「法的な規範(命令)」の表現ではない。つまり、それは「達成できなくとも努力さえすればそれで良い」という程度の意味である。なぜなら、国家の財源には常に限界があるからである。

 だから、この程度のことを憲法に明記する意義はますます不明である。=つづく


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『人権』がわからない政治家たち」(日刊現代・講談社 1430円)

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