「バンス・リスク」でトランプ陣営に暗雲か? ハリス副大統領への「子なしの猫好き女」侮辱発言に非難囂々

公開日: 更新日:

 トランプ前大統領はこの展開を予想していたのかどうか――。11月の米大統領選でトランプ氏の伴走者となる共和党の副大統領候補、バンス上院議員(39)の発言が大炎上している一件だ。

 バンス氏は2021年のテレビインタビューの際、民主党を攻撃する文脈でハリス副大統領(59)ら出産経験がない女性について、「チャイルドレス・キャット・レディー(子がいない寂しさを紛らわせるために猫を飼う女)」と呼び、「惨めな人生を送る人間が、米国を惨めにしている」と発言していたことを“発掘”され、猛批判を浴びているのだ。

 全米の女性を敵に回したも同然で、女優のジェニファー・アニストンが「次期副大統領候補がこんな発言をするなんて本当に信じられない」とSNSに投稿するなど、ハリウッドセレブを巻き込んだだけでなく、保守派のコメンテーターや政治評論家など共和党支持の女性たちからも非難され、火だるまになっている。

 中西部オハイオ州出身のバンス氏は、ラストベルト(さびついた工業地帯)の白人貧困層の悲哀を描いた自叙伝でベストセラー作家となり、上院議員、そして副大統領候補にまでのし上がった。かつてトランプ氏を「アメリカのヒトラー」と呼んで批判していたが、上院選で推薦してもらった後は、すっかりトランプ氏に忠誠を誓っている。もっとも、過去に「中絶禁止」をめぐる過激発言もある。口汚い罵りは、トランプ好みと言えるが、トランプ氏の選挙戦に影響しないのか。

「バンスの発言は通常ならマイナスでしかない。しかし、今の分断された米国では、共和党にとってプラスにもなる。例えば『子どもがいて当然』という家族観の福音派にすれば『バンス、よく言った』となる。共和党寄りの無党派にも、バンスが共和党の副大統領候補としてより適任、というメッセージになる」(上智大教授・前嶋和弘氏=現代米国政治)

 トランプ氏がバンス氏を選んだ時点では、戦いの相手はバイデン・ハリスのコンビだった。バンス氏で激戦州の白人票を稼ぐ狙いもあったが、相手がハリス氏に代わり、民主党の副大統領候補はこれから決まる。激戦州の知事や上院議員など白人男性が有力候補だ。そうなると、バンス氏の強みは薄れる。

「そこまでマイナス要因にはならないでしょう。ただ、バンス氏の存在により、民主党の団結を強くする効果はあると思います」(前嶋和弘氏)

 来月の民主党大会に向け、ハリス陣営がどんどん結束を固めそうだ。

■関連キーワード

最新の政治・社会記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 政治のアクセスランキング

  1. 1

    「立花一派」の一網打尽が司法の意志…広がる捜査の手に内部情報漏した兵庫県議2人も戦々恐々

  2. 2

    日銀を脅し、税調を仕切り…タガが外れた経済対策21兆円は「ただのバラマキ」

  3. 3

    日中対立激化招いた高市外交に漂う“食傷ムード”…海外の有力メディアから懸念や皮肉が続々と

  4. 4

    高市首相のいらん答弁で中国の怒りエスカレート…トンデモ政権が農水産業生産者と庶民を“見殺し”に

  5. 5

    「総理に失礼だ!」と小池都知事が大炎上…高市首相“45度お辞儀”に“5度の会釈”で対応したワケ

  1. 6

    高市政権の“軍拡シナリオ”に綻び…トランプ大統領との電話会談で露呈した「米国の本音」

  2. 7

    林芳正総務相「政治とカネ」問題で狭まる包囲網…地方議員複数が名前出しコメントの大ダメージ

  3. 8

    維新の“公金流用疑惑”が尽きない事情…藤田文武共同代表に続き、今度は高木佳保里総務会長

  4. 9

    自民党・麻生副総裁が高市経済政策に「異論」で波紋…“財政省の守護神”が政権の時限爆弾になる恐れ

  5. 10

    高市政権の放漫財政が引き起こすジレンマ…バラマキ経済対策がさらなる物価高を後押し

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    安青錦は大関昇進も“課題”クリアできず…「手で受けるだけ」の立ち合いに厳しい指摘

  2. 2

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  3. 3

    マエケン楽天入り最有力…“本命”だった巨人はフラれて万々歳? OB投手も「獲得失敗がプラスになる」

  4. 4

    中日FA柳に続きマエケンにも逃げられ…苦境の巨人にまさかの菅野智之“出戻り復帰”が浮上

  5. 5

    今田美桜に襲い掛かった「3億円トラブル」報道で“CM女王”消滅…女優業へのダメージも避けられず

  1. 6

    高市政権の“軍拡シナリオ”に綻び…トランプ大統領との電話会談で露呈した「米国の本音」

  2. 7

    エジプト考古学者・吉村作治さんは5年間の車椅子生活を経て…80歳の現在も情熱を失わず

  3. 8

    日中対立激化招いた高市外交に漂う“食傷ムード”…海外の有力メディアから懸念や皮肉が続々と

  4. 9

    安青錦の大関昇進めぐり「賛成」「反対」真っ二つ…苦手の横綱・大の里に善戦したと思いきや

  5. 10

    石破前首相も参戦で「おこめ券」批判拡大…届くのは春以降、米価下落ならありがたみゼロ