福島の小児甲状腺がんを追うジャーナリスト白石草さん「顔を出して『原発の健康被害がある』と言うのは本当に難しい」
白石草(ジャーナリスト)
原発事故から15年。福島県では400人もの当時、子どもだった若者が甲状腺がんと診断されている。小児甲状腺がんは年間100万人に1人か2人とされ、事故当時18歳以下だった検査対象38万人からすると明らかに多い。行政は「過剰診断」によるものだとして事故との因果関係を否定。7人が裁判で争っている。
今月22、23日、東京・日比谷で「福島映像祭」が開かれ、福島や3.11に関するドキュメンタリー映画などが上映される。その主催者で、自身も甲状腺がんの当事者を主人公にした新作を製作したジャーナリストに話を聞いた。
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──福島の甲状腺がん問題の取材はいつから?
子どもへの健康影響がずっと気になっていて、甲状腺がんに強くフォーカスするようになったのは2013、14年ごろからです。取材当初から映像化を念頭に置き、いずれは当事者にカメラを向けたいと考えていましたが、「これを発表するのは難しい」と途中でブレーキをかけました。
──なぜ難しかったのですか。
意外と知られていないのですが、「福島で甲状腺がんが増えている」という言説だけで、風評被害だと激しく攻撃されるような状況がある。当事者もがんになっていることを親戚や身近な人にさえ言えないほどのプレッシャーが福島県内にはあります。2016年ごろまでは、誰かが名乗りを上げるなどして、この問題に注目が集まるかもしれないと思っていました。でも、顔を出して「原発の健康被害がある」と言うことは本当に難しい。ここ5、6年は特にそうで、テレビなどで取り上げるだけで大炎上なんです。
■過剰診断論が主流も曖昧さ残す
──小児甲状腺がん問題の経過を教えてください。
事故後、放射性物質が大量に拡散したことで、チェルノブイリ原発事故でも増加した小児甲状腺がんに対する不安が高まりました。本来なら安定ヨウ素剤を配らなければならなかったのに、配れなかった。その後に始まった甲状腺検査は「安心のための検査」という位置づけでスタートしました。ところが3年目ごろから急激にがんが見つかり始め、「検査をしすぎているから、見つけなくていいがんを見つけている」という意見が一気に出てきた。100人を超えた段階で、スクリーニングにより「将来的に臨床診断されないがんを多数診断している過剰診断だ」として検査をやめるべきという議論が大きくなりました。30~50倍という増え方をしていること自体は誰も争わない。でもその原因について、「福島はチェルノブイリより放射線量がはるかに少ないのに、こんなに増えるはずがない。だから検査のせいだ」という論が主流になっていき、肥大化している感じです。
──風評被害というのは?
「福島でがんは増えていない。見つける必要がないものを見つけているだけだ」という主張のもと、「福島の人が被曝して病気になっているというのは風評であり差別だ」というロジックが生まれています。「福島の人は被曝していない。何も起きていない」というのが「福島の人にとっての幸せ」になると、病気になっていない人はいいけれど、病気になっている人だけが孤立する。そんな構造になっています。
──取材を続けてきた立場から、どう見ていますか。
疫学の専門家など主流の人がスクリーニング効果論を主張しているので、私自身も「科学的に本当はどうなんだろう」と考えます。ただ、発表されているのは数字(人数)だけで、実際に治療を受けた子たちがどうなっているかはほぼ隠されています。個別に見ていくと再発も起きているし、映画のこはくさんもそうですが、放置すれば大きなリスクになるようながんもある。福島医大の臨床のお医者さんも、個別には「甲状腺がんが潜在がんだ」とか「過剰診断だ」ということを否定しています。二重の情報を走らせておくことで、被曝影響だろうという声を封じ込めておく。そんな曖昧さを感じています。


















