チリッチを“サーブの怪物”に変えたイワニセビッチ氏の徹底改造
クロアチアの新鋭マリン・チリッチが4大大会で初優勝。賞金300万ドル(約3億1500万円)を手にした(2位は145万ドル=約1億5000万円)。 準決勝でロジャー・フェデラー(33)を破った強さはフロックではなかった。
チリッチは、ジュニア時代から欧州ではトップクラスとして名を馳せ、05年世界スーパージュニア選手権で優勝。同年にプロ転向を果たした。198センチの長身を生かしたパワーあふれるプレーが持ち味だが、これまでは勝負どころでの粗さが目立った。昨年5月のBMWオープンではドーピング検査で陽性反応が出て、9カ月の出場停止処分が科された(後に4カ月間に短縮)。
転機となったのは昨年12月。01年のウィンブルドン男子シングルス覇者で現役時代は高速サーブを武器としていた同じクロアチア人のゴラン・イワニセビッチ氏(42)のアドバイスを受けるようになった。今年1月に正式にコーチ契約を交わしたイワニセビッチ氏は、チリッチの長身とパワーを存分に生かすため、映像を使った動作解析などを用いて理想的なフォームを追求。昨季まではひざを曲げて打つなど、ボールに力が伝わりにくいフォームだったが、オフにマンツーマンで改良に励んだ。今大会、フェデラー、錦織を最後まで圧倒した最速200キロを超えるサーブを習得した。
チリッチはボスニア・ヘルツェゴビナのメジュゴリエ出身。サッカー好きのテニスプレーヤーとして知られ、普段は母国クロアチア代表のユニホームを着用。熱狂的なACミランのサポーターで、自宅の部屋はチームグッズであふれているという。