渋野は全米Vならずもスランプ脱出 心・技・体で“原点回帰”

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【全米女子オープンゴルフ】最終日

「優勝はできなかったですが悔いはないです」

 雨天により最終日が14日(現地)に順延された最終日。通算4アンダーの単独首位でスタートした渋野日向子(22)は、2バーディー、5ボギーの74と崩れ、通算1アンダーの4位に終わり、こう言った。

■まるでリンクスの全英

 この日はどんよりとした曇り空。気温は6度前後と寒く、吐く息が白い。選手たちはプレー中、毛糸の帽子に耳当て、ミトンの手袋をして完全防寒。ショット後はすぐコートを着るなど忙しかった。その姿は、真夏でも気象条件が厳しい全英女子オープンを彷彿させた。

 大会を主催するUSGA(全米ゴルフ協会)は厳しい寒さから選手の飛距離ロスを考慮し、各ホールの距離を大幅に短縮して、400ヤード以上のパー4は消えた。

 日本勢では、1987年大会の岡本綾子以来となる最終組トップ発進の渋野は、寒さの影響で「飛距離は落ち、自分のスイングができず」ショットが乱れた。

 前半は2ボギーで同組のA・オルソン(28=米国)と並び、2アンダーで折り返す。バックナインは前日の雨を含んだフェアウエーでボールに土が付く不運もあり、10番のボギーで2位へ後退。続く11番はアプローチミスによるボギー。悪い流れが止まらない。オルソンもスコアを伸ばせずモタモタしている間に、最終組から4組前で通算1オーバー9位からスタートしたキム・エリム(25=韓国)が4つスコアを伸ばし、通算3アンダーで先にホールアウト。渋野は18番でピン奥10メートルのバーディーパットを沈めて通算1アンダーまでスコアを戻したが、クラブハウスリーダーのキムに逆転優勝を許した。

「悔しいがこれが今の実力。寒さで体が動かず、ショットもグリーンに乗らず、耐えるところは耐えたけど、そういうゴルフは通用しないことがわかった。今年一年を考えるとよく頑張ったと思うが……」

 渋野はインタビューで涙目になり、一時は声を詰まらせ、こう続けた。

「1日目と2日目は良すぎた。3日目、4日目はプレッシャーがかかりショットがグリーンにのせられなかった。最終的に優勝できなかったですが悔いはないです」

 年内最後のメジャー大会で最終日まで優勝争いを演じてのトップ5入りは、ファンをやきもきさせた長いスランプからようやく抜け出したともいえる。

■捨てたチャンピオンの意識

 メンタル面でも吹っ切れたところがある。

 10月の全米女子プロでは、出場選手のレベルの高さを痛感し、「もうメジャーチャンピオンの意識を捨てていいんじゃないかなと思う」と、言った。

 追手門学院大学スポーツ研究センター特別顧問でスポーツ心理学者の児玉光雄氏が分析する。

「全英女子に勝って世界の頂点に立ちましたが、その後はメジャーチャンピオンの重圧を背負い、思い切りの良さが消えた。体も思うように動かず、イメージしたスイングができなかったのでしょう。結果が出なくても、ファンからは『笑顔』を求められることもつらかったはずです。表情を見てもかなりめいっていました。ある程度の時間が経過し、全英優勝は遠い過去のことと割り切ったことが、本人のコメントからもうかがえました。心の問題が解消されたんだなと思いました」

 今大会でも好プレーの理由に、「今までの自分を捨てたことかな」と、ここにきて「捨てる」という言葉が頻繁に出るようになった。

 実際、昨季終盤から渋野のキャディーバッグを担ぎ、「大王製紙エリエールレディス」優勝に貢献して、今年の海外ツアー6試合にも帯同した専属キャディーとのコンビも解消している。

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