【野球】田中将大KO降板でメジャー復帰の野望は木っ端みじん…侍Jは米国にサヨナラ勝ち
4回途中3失点KO
「国を背負って戦う。楽しみなんてない」
日本代表「侍ジャパン」の田中将大(32)が、こう悲壮感を漂わせて2日、決勝トーナメント初戦となる準々決勝の米国戦に先発。三回まで4奪三振、無失点に抑えたが、2点を先制した直後の四回に暗転した。1死一塁から5番のフレージャーに左中間適時二塁打を浴びると、なおも1死一、三塁からコロジュバリーに左前へ運ばれ同点。さらに2死一、二塁からアレンに右翼線へ適時二塁打を浴びて逆転を許したところで降板となった。侍ジャパンは延長十回7―6でサヨナラ勝ちを収め、準決勝進出を決めた。
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メジャーから8年ぶりに日本球界に復帰。2008年北京五輪の3位決定戦で敗れ、メダルを逃した宿敵相手に、気合が空回りした格好だ。
■9億円以上の年俸はあり得ない
楽天でここまで4勝5敗、防御率2.86。年俸9億円の2年契約を結んでいるが、「米国でやり残したことがある」と話しており、自分で契約を破棄できる「オプトアウト権」があるとされる。五輪の舞台で米国相手にいい投球をすることは、格好のアピールになるはずだった。しかし、米国で中継を見たア・リーグのスカウトがこう指摘する。
「田中は自分にかつての力がないことが分かっているのではないか。勝負どころでボールになる変化球で打ち取ろうとしたが、甘く入って失点につながった。本人は力勝負では抑えられないと思っているのでしょう。米国はオースティン(DeNA)が3番を打っているように、メジャーと比べれば明らかに格下。その打線を抑えられなかった田中の投球は、米国にいる我々スカウトがオンタイムでチェックしています。田中がメジャー復帰を考えているとすれば、明らかなマイナス。楽天は来年まで9億円の年俸を払う契約を結んでいるだけに、今オフに田中を獲得するにはそれ以上のカネが必要になる。それだけのカネを出すメジャー球団があるとは思えません」
データサイトでの直球の質は300人中230番台
実際、年齢からくる「衰え」も指摘される。球種ごとの価値を示す「ピッチバリュー」という指標がある。ボールを投げる前と後で生じた「得点期待値」の増減を合算したもので、投手側から見ると、凡打やストライクで期待値を減らすと「プラス」、ヒットやボール球で期待値を上げてしまうと「マイナス」になる。スポーツライターの友成那智氏がこう言う。
「コロナ禍で60試合と少なかった昨年のフォーシーム(直球)の質はマイナス3.5、162試合だった19年は、試合数同様に約3倍となってマイナス9.5。マイナスが2ケタになると、メジャー投手の中でワーストに近いとされます。かつて武器にしたスプリットは、昨年マイナス0.2、19年はマイナス4.4。一方でスライダーは昨年プラス2.0、19年はプラス22.9。プラスが2ケタならメジャーでも上位です。フォーシームはメジャーでは苦しいレベルで、スプリットもマイナス。今やスライダー投手ですが、その武器でさえ、昨年は陰りが見えることが分かります」
さらに興味深いデータがある。友成氏が続ける。
「『ファングラフス』というデータサイトの各球種の採点表で、直球の質は300人ほどの投手の中で230番台。投手を総合的に評価する指標の『WAR』は0.8点です。1点を600万ドルで計算すれば、昨年までのおおよその適正年俸が出る。田中は480万ドル(約5億3000万円)ほどになります。この日の投球を見ても、米独立リーグでプレーする35歳のフレージャーにクリーンヒットを打たれているようでは、メジャーでは厳しいと思います」
今大会は変則トーナメントで決勝は7日。中4日になるため、この日が最初で最後の先発になる可能性は高い。「今日の結果は悔しいし、つらい。まだ終わったわけではないので、次の登板に備えて準備する」と言ったが、登板自体もあるかどうか。北京五輪のリベンジはもちろん、「やり残した」と言うメジャー復帰も遠のくKO劇となった。