著者のコラム一覧
春日良一五輪アナリスト

長野県出身。上智大学哲学科卒。1978年に日本体育協会に入る。89年に新生JOCに移り、IOC渉外担当に。90年長野五輪招致委員会に出向、招致活動に関わる。95年にJOCを退職。スポーツコンサルティング会社を設立し、代表に。98年から五輪批評「スポーツ思考」(メルマガ)を主筆。https://genkina-atelier.com/sp/

2030年札幌五輪招致「町おこし」的な下心では開催する意義はない

公開日: 更新日:

 その意味でコロナは日本人を覚醒させるためにやってきたと言えるのかもしれない。あるいは東京五輪招致の下心を白日の下にさらすためにやってきたとも。世論はコロナの感染が拡大する状況の中、「命を賭しても五輪を開催する意義があるのか?」を問うた。そこで初めて主催は五輪の意義に向き合わなければならなかった。そして、その答えが「安心・安全な大会を開催する」であった。それが最後に絞り出した精いっぱいの答えだった。

 東京五輪招致には確固たる理念が見えなかった。国会で東京五輪を開催する理由について問われた菅前首相が1964年東京オリンピックの時に見たバレーボール女子決勝戦の感動や柔道無差別級で優勝したへーシンクの礼儀を語ったが、実に東京2020の招致の根底にあったものを如実に表していた。それは、64年東京オリンピックへの郷愁であり、同五輪が果たした日本復興への信心にも似た憧れであった。つまり、国威発揚と経済対策に利用するという下心である。

 しかし、時は既にSDGsに向かっている。自国のことばかりを考えている時代ではない。例えば、2030年の五輪からはクライメートポジティブが求められる。つまり大会におけるCO2はマイナスにしなければならない。その五輪に立候補している札幌市は東京2020から学ばなければなるまい。今のところ1972年の札幌冬季オリンピックがもたらした「町おこし」的成功を狙っているとしかみえない。札幌市のためではなく、世界のために札幌がオリンピックを招く意義を見いだすべきだ。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    冷静になれば危うさばかり…高市バブルの化けの皮がもう剥がれてきた

  2. 2

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  3. 3

    大関取り安青錦の出世街道に立ちはだかる「体重のカベ」…幕内の平均体重より-10kg

  4. 4

    藤川阪神で加速する恐怖政治…2コーチの退団、異動は“ケンカ別れ”だった

  5. 5

    維新・藤田共同代表に自民党から「辞任圧力」…還流疑惑対応に加え“名刺さらし”で複雑化

  1. 6

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  2. 7

    小野田紀美経済安保相の地元を週刊新潮が嗅ぎ回ったのは至極当然のこと

  3. 8

    前田健太は巨人入りが最有力か…古巣広島は早期撤退、「夫人の意向」と「本拠地の相性」がカギ

  4. 9

    「しんぶん赤旗」と橋下徹氏がタッグを組んだ“維新叩き”に自民党が喜ぶ構図

  5. 10

    歪んだ「NHK愛」を育んだ生い立ち…天下のNHKに就職→自慢のキャリア強制終了で逆恨み