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元川悦子サッカージャーナリスト

1967年7月14日生まれ。長野県松本市出身。業界紙、夕刊紙を経て94年にフリーランス。著作に「U―22」「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年 (SJ sports)」「「いじらない」育て方~親とコーチが語る遠藤保仁」「僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」など。

(8)森保監督はオマーン戦敗戦後に解任を覚悟していた W杯出場を決めた翌朝明かす

公開日: 更新日:

 日本代表が敵地未勝利だった宿敵・オーストラリアを2-0で撃破し、7大会連続W杯出場を決めた翌25日。早朝7時から森保一監督がメディア陣の前に登場し、久しぶりのリアル取材が実現した。

「2021年9月の初戦・オマーン戦(吹田)に負けた時、『辞める覚悟がある』と麻也(吉田=サンプドリア)と関係者に言いました。1戦1戦が生きるか、死ぬか。本当に自分でいいんだろうかという思いになりました」

■悲壮な決意が選手の闘争心に火をつけた

 一時は職を辞する覚悟をしながら、6連勝で逆転突破を引き寄せた指揮官。悲壮な決意が選手たちの闘争心に火をつけたのだろう。

 24日の試合直後からは戦争のような状態だった。現地午後21時頃に試合が終わると、スタジアム・オーストラリアで歓喜に酔いしれる選手たちの姿を遠目に見ながら、敵将・アーノルド監督と森保監督のオンライン会見に参加した。

 長年、代表取材をしているが、W杯出場決定試合後に直々に話ができないのは初めて。コロナ対策が重要なのは重々理解しているが、観客の大半がノーマスクで声出し応援をしている場所で我々だけが遠くに隔離されるのは辛い。対面取材の早期復活を願うばかりだ。

 終了後、渋滞にも遭うことなく約15分で宿泊先に着き、日本選手のオンライン対応に備えた。特別な日ということで、日本協会広報担当もスタメン+マン・オブ・ザ・マッチの三笘薫(サンジロワーズ)の合計12人を出してくれた。

記者魂というアドレナリンが湧き出た

 そのためにパソコン2台を立ち上げ、どちらも出られる体制を整えたのだが、さすがに全員の話は聞けない。今回は三笘や吉田、長友佑都(FC東京)といったいった面々に質問。データ起こしをしていたら深夜3時を過ぎてしまった。

 そこから1時間半ほど仮眠し、午前6時15分に代表の泊まっているホテルへ向かった。「森保監督の囲み
取材」の連絡があったからだ。

 眠い目をこすり、筆者の運転で仲間とともに真っ暗なシドニーの街を走ったが、さすがに頭が回らなかった。

 それでも現場に着くとアドレナリンが出てくるのが記者魂。指揮官も目が真っ赤。一睡もしていない様子だったが、「みなさんありがとうございます」と丁寧に挨拶し、1人1人とグータッチをしてくれた。昨年11月のオマーンでもそうだったが、その気配りは本当に素晴らしいと感心させられる。

 その森保監督が最終予選序盤に辞任を考えたという話を前夜、吉田が語っていたので筆者はストレートに本人に聞いた。

「麻也が言ったんですか。じゃあ話します」と森保監督は切り出した。

■衝撃的な話に睡魔が吹っ飛んだ

 初戦黒星の後、『もし自分がダメなら早く代えてもらった方が日本サッカーのためになる。判断の遅れで取り返しのつかないことになってしまうのはよくない』と協会関係者に言いました」と彼は包み隠さずに喋ったのだ。

 その考えは当初、吉田だけに伝えられた模様だが、昨年10月のサウジアラビア戦(ジェッダ)を落とした後、チーム全員が知るところになったようだ。

 これを機に選手たちの目の色がガラッと変わった。確かに10月のオーストラリア戦(埼玉)直前のチームは、異様な緊張感に包まれていた。ギリギリまで追い込まれなければ、その後の快進撃もなかった。

「現在も勝利のために契約期間を全うしたいですけど、途中で途絶えたとしても次に繋がる何かを残しながら仕事をしたい」とも森保監督は話していた。

 とにかく彼にとっては、日本代表の勝利と日本サッカーの発展が第一。そのためなら自らを犠牲にする覚悟で取り組んでいた。だからこそ、長友も「森保さんは全くブレなかった」とリスペクトを口にしたのだろう。

 早朝から衝撃的な話を聞き、眠気が吹っ飛んだ。代表監督の重み、大変さを再認識するのと同時に批判を払拭しようと思うなら、8カ月後に迫ったカタール本番で8強超えを果たすしかない、とも感じだ。

 オーストラリア戦で采配を的中させた森保監督にはこの先、さらなる効果的な選手起用、マネジメントが求められてくる。

久保建英ら若手たちは猛アピールなるか

 約30分の囲み取材を終え、原稿を執筆。夕方には帰国する仲間を送りつつ、シドニー空港でPCR検査を受けた。すでにオンラインで事前登録してあったのでパスポートと予約QRコードを提示し、口と鼻から検体を取るだけでものの30秒で終了した。

 結果も1時間以内にメールで届き、陰性が確認された。これは本当にスムーズ。さすがはオーストラリアだと感心した。

 日本代表はひと足先に出国し、同日夜には帰国。26日からはカタールに向けた新たなサバイバルが始まる。

 久保建英(マジョルカ)ら大一番でピッチに立てなかった若い世代は、猛アピールを見せられるのか。現在、ドバイカップ参戦中のU-21日本代表からも荒木遼太郎(鹿島)、鈴木唯人(清水)を筆頭にキラリと光る才能が森保日本に食い込んできてほしいものである。(つづく)

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