野球賭博発覚の2010年名古屋場所「満員御礼を出そうか、館内を3周して迷った」

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思い出の名古屋で矢面に立った「ほら吹き金剛」

 現役時代の異名は「ほら吹き金剛」。75年名古屋場所は面目躍如だった。6日目から10連勝して13勝2敗の平幕優勝。横綱北の湖に快勝して「もうちょっと汗をかきたかったな」と言い放ち、「優勝パレードでずっと手を振ってるとしびれるから、自動手振り器でも作らないと」などと「金剛節」で話題をまいた。

 その35年後、批判の嵐の中で責任者として関係各方面に頭を下げ、報道陣にも連日応対した。減収額なども数字を出して説明している。抑えていた「金剛節」がちらりとのぞいたのが、「毎日でも土俵祭」や「館内3周」だろう。

 土俵では白鵬(現間垣親方)が全勝で賜杯なき優勝を飾った。大相撲を守る横綱の姿が共感を呼び、満員御礼も4回。二所ノ関親方は「こんな場所に……」と感謝した。

 今年、名古屋場所の定員は7696人で、フルに観客を入れるのは20年初場所以来だが、初日は82%の6331人。その後も中日までの前半戦は満員御礼までいかなかった。

 不祥事とコロナでは、同じ逆風でも状況は違うし、この間にさまざまな変化も起きている。一概に比較できないが、若手親方の一人は「年1回だし、何万人も集めるわけでなし、見たければ来てもらえるはず」と厳しく受け止める。

 新鋭力士の熱戦も随所にあるが、序盤で大関陣が締まらない場所のイメージをつくってしまった。

 二所ノ関親方は14年に65歳で亡くなった。もっとしぶとい相撲を取ってくれ。記者のリモート取材を無視せず、ほらの一つも吹いてくれと、言いたいのではないか。

▽若林哲治(わかばやし・てつじ) 1959年生まれ。時事通信社で主に大相撲を担当。2008年から時事ドットコムでコラム「土俵百景」を連載中。 

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