著者のコラム一覧
鈴村裕輔野球文化学会会長・名城大教授

1976年、東京都出身。法政大学博士(学術)。名城大学外国学部教授。主な専門は政治史、比較思想。野球史研究家として日米の野球の研究にも従事しており、主著に「MLBが付けた日本人選手の値段」(講談社)がある。スポーツを取り巻く様々な出来事を社会、文化、政治などの多角的な視点から分析している。アメリカ野球学会会員。

ジャッキー・ロビンソンの“遺産”を活用せざるを得ない…大リーグでの黒人選手の実情

公開日: 更新日:

 黒人リーグは大リーグがキューバ人を例外として有色人種を除外していた時代にあって、アフリカ系アメリカ人にとって最も高い水準で野球を行える場所であった。

 しかし、「人種の壁」が克服されると、大リーグ各球団は優秀な人材を獲得するために黒人リーグの選手を迎え入れ、リーグの存立基盤は揺らぐことになる。そして1948年にニグロ・ナショナルリーグ、1960年にはニグロ・アメリカンリーグが消滅し、黒人リーグそのものが雲散霧消する。

 その後、黒人リーグは存在そのものが忘れ去られることになったが、2020年に大リーグ機構が黒人リーグを大リーグと同等であると認定、記録の統合が行われた。

 こうした措置は、過去の適切な評価にとどまるものではない。むしろ、大リーグに占めるアフリカ系アメリカ人選手の割合は1980年代半ばから低下、現在では白人、ヒスパニック系に次ぐ位置となっていること、さらにアフリカ系アメリカ人の観客も減少していることと無関係ではないのである。

 アフリカ系アメリカ人の選手や観客から今なお大きな尊敬を集めているのがロビンソンだ。記録の統合によって黒人リーグの存在に人々の関心を向けさせた球界にとって、博物館の開設は選手や観客に「アフリカ系アメリカ人を見捨てていない」と訴えかける格好の手段となる。同時に現在の大リーグは、ロビンソンという遺産を活用しなければならないほど、アフリカ系アメリカ人の存在感が希薄になっているのである。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 野球のアクセスランキング

  1. 1

    松井秀喜氏タジタジ、岡本和真も困惑…長嶋茂雄さん追悼試合のウラで巨人重鎮OBが“異例の要請”

  2. 2

    横浜・村田監督が3年前のパワハラ騒動を語る「選手が『気にしないで行きましょう』と…」

  3. 3

    巨人・田中将大と“魔改造コーチ”の間に微妙な空気…甘言ささやく桑田二軍監督へ乗り換えていた

  4. 4

    打者にとって藤浪晋太郎ほど嫌な投手はいない。本人はもちろん、ベンチがそう割り切れるか

  5. 5

    さらなる地獄だったあの日々、痛みを訴えた脇の下のビー玉サイズのシコリをギュッと握りつぶされて…

  1. 6

    【広陵OB】今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  2. 7

    日本ハム中田翔「暴力事件」一部始終とその深層 後輩投手の顔面にこうして拳を振り上げた

  3. 8

    最速158キロ健大高崎・石垣元気を独占直撃!「最も関心があるプロ球団はどこですか?」

  4. 9

    広陵・中井監督が語っていた「部員は全員家族」…今となっては“ブーメラン”な指導方針と哲学の数々

  5. 10

    DeNA藤浪晋太郎がマウンド外で大炎上!中日関係者が激怒した“意固地”は筋金入り

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    参政党・神谷宗幣代表の「質問主意書」がヤバすぎる! トンデモ陰謀論どっぷり7項目に政府も困惑?

  2. 2

    7代目になってもカネのうまみがない山口組

  3. 3

    福山雅治のフジ「不適切会合」出席が発覚! “男性有力出演者”疑惑浮上もスルーされ続けていたワケ

  4. 4

    松井秀喜氏タジタジ、岡本和真も困惑…長嶋茂雄さん追悼試合のウラで巨人重鎮OBが“異例の要請”

  5. 5

    文春が報じた中居正広「性暴力」の全貌…守秘義務の情報がなぜこうも都合よく漏れるのか?

  1. 6

    フジテレビ「不適切会合」出席の福山雅治が連発した下ネタとそのルーツ…引退した中居正広氏とは“同根”

  2. 7

    打者にとって藤浪晋太郎ほど嫌な投手はいない。本人はもちろん、ベンチがそう割り切れるか

  3. 8

    清原果耶は“格上げ女優”の本領発揮ならず…「初恋DOGs」で浮き彫りになったミスキャスト

  4. 9

    選管議論で総裁選前倒しでも「石破おろし」ならず? 自民党内に漂い始めた“厭戦ムード”の謎解き

  5. 10

    収束不可能な「広陵事件」の大炎上には正直、苛立ちに近い感情さえ覚えます