大谷の大活躍の根底には西海岸の風土《イライラしているヤツなんてひとりもいない》

公開日: 更新日:

 いまから14年前、2010年6月12日のことだ。

 ドジャースの本拠地では対エンゼルス戦が行われた。同じロスを本拠地にするチーム同士の対戦は「ハイウエーシリーズ」と呼ばれる人気カード。ドジャースタジアムには5万2806人が押し寄せた。

 当時のドジャースの監督はジョー・トーリ。松井秀喜ヤンキース時代のボスで、エンゼルス1年目の松井とは「師弟対決」として日本メディアの注目を集めた。

 その試合前だった。ニューヨークを本拠地にするヤンキース対メッツ戦は「サブウエーシリーズ」と呼ばれ、ファンやメディアが注目する。そのヤンキースとメッツで指揮を執った経験のあるトーリにメディアから質問が飛んだ。

「ハイウエーシリーズはサブウエーシリーズと比べてどうか?」「人気や注目度は?」

 するとトーリは「まったく違う。比較にならないよ」と、一笑に付してこう言った。

「この青い空、カリフォルニアの天気を見れば分かるだろう。イライラしてるヤツなんて、ひとりもいないぞ」

 トーリはヤンキース監督時代、しばしば当時のジョージ・スタインブレナー・オーナーからの電話に悩まされたとか。中でも本拠地が同じメッツと、オーナーの自宅とキャンプ地のあるタンパを本拠地にするデビルレイズ(現レイズ)には負けるなと厳命されたそうだ。

 ニューヨークのある東海岸はファンやメディアの厳しさもハンパじゃない。

 今回、大谷翔平(30=ドジャース)のMVP論争で「大谷ではなくリンドア(30=メッツ)がふさわしい」「大谷は打たなければ勝利に貢献しないが、リンドアは激務の遊撃守備でも貢献している」という声が噴出しているのもシビアな東海岸ならでは。

 日本時間19日現在、53本塁打を放っているジャッジ(32=ヤンキース)は70打席本塁打がなく、自己ワーストとニューヨークメディアに騒がれた。

 サイ・ヤング賞5回受賞、メジャー通算4875奪三振のランディ・ジョンソンは、やかましいニューヨークのファンやメディアに辟易、ヤンキースには2年いただけでトレードを志願して自宅のあるアリゾナ(ダイヤモンドバックス)に戻っている。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 野球のアクセスランキング

  1. 1

    ドジャース「佐々木朗希放出」に現実味…2年連続サイ・ヤング賞左腕スクーバル獲得のトレード要員へ

  2. 2

    横浜とのFA交渉で引っ掛かった森祇晶監督の冷淡 落合博満さんは非通知着信で「探り」を入れてきた

  3. 3

    ヤクルト「FA東浜巨獲得」に現実味 村上宗隆の譲渡金10億円を原資に課題の先発補強

  4. 4

    日本人選手で初めてサングラスとリストバンドを着用した、陰のファッションリーダー

  5. 5

    中日からFA宣言した交渉の一部始終 2001年オフは「残留」と「移籍」で揺れる毎日を過ごした

  1. 6

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  2. 7

    ドジャース内野手ベッツのWBC不参加は大谷翔平、佐々木朗希、山本由伸のレギュラーシーズンに追い風

  3. 8

    巨人は国内助っ人から見向きもされない球団に 天敵デュプランティエさえDeNA入り決定的

  4. 9

    来秋ドラ1候補の高校BIG3は「全員直メジャー」の可能性…日本プロ野球経由は“遠回り”の認識広がる

  5. 10

    巨人阿部監督の“育成放棄宣言”に選手とファン絶望…ベテラン偏重、補強優先はもうウンザリ

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    福原愛が再婚&オメデタも世論は冷ややか…再燃する「W不倫疑惑」と略奪愛報道の“後始末”

  2. 2

    「年賀状じまい」宣言は失礼になる? SNS《正月早々、気分が悪い》の心理と伝え方の正解

  3. 3

    「五十年目の俺たちの旅」最新映画が公開 “オメダ“役の田中健を直撃 「これで終わってもいいと思えるくらいの作品」

  4. 4

    放送100年特集ドラマ「火星の女王」(NHK)はNetflixの向こうを貼るとんでもないSFドラマ

  5. 5

    国民民主党・玉木代表「ミッション・コンプリート」発言が大炎上→陳謝のお粗末…「年収の壁」引き上げも減税額がショボすぎる!

  1. 6

    どこよりも早い2026年国内女子ゴルフ大予想 女王候補5人の前に立ちはだかるのはこの選手

  2. 7

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  3. 8

    「M-1グランプリ2025」超ダークホースの「たくろう」が初の決勝進出で圧勝したワケ

  4. 9

    「核兵器保有すべき」放言の高市首相側近は何者なのか? 官房長官は火消しに躍起も辞任は不可避

  5. 10

    楽天が変えたい「18番は田中将大」の印象…マエケンに積極譲渡で“背番号ロンダリング”図る