(3)発酵してできた短鎖脂肪酸は毒素を減らす効果が期待できる
前回は、食物繊維と発酵性食物繊維の違いについて説明した。今回は、発酵性食物繊維の発酵によって産生される「短鎖脂肪酸」と、その健康効果について説明したい。
短鎖脂肪酸とは、大腸で善玉菌が発酵性食物繊維を食べてできる成分だ。酢酸、プロピオン酸、酪酸などが知られている。これら短鎖脂肪酸の健康効果は、近年の多くの研究によって知られるようになってきた。
日本食物繊維学会理事長で大妻女子大学家政学部の青江誠一郎教授は、短鎖脂肪酸の機能についてこう説明する。
「昔から言われている食物繊維の健康機能は、便通の改善と、糖質や脂質の吸収をゆるやかにするなどでメタボリックシンドロームへの進行が抑制されることです。そして、近年明らかになってきた効果は、発酵してできた短鎖脂肪酸が全身に働くことです」
短鎖脂肪酸の健康効果は多岐にわたるが、最も注目されているのが、免疫能の正しい維持だ。
たとえば、新型コロナウイルス感染症の重症化の一因であるサイトカインストーム(免疫が暴走して炎症が止まらない状態。敗血性ショックとも)を、短鎖脂肪酸の一種である酪酸が、制御性T細胞を活性化させ、抑制することがわかっている。他の感染症の悪化や、自己免疫性疾患、アレルギーなど、免疫が本来の役割以上に働いてしまうために起こる症状も、抑制する効果があるとされる。