元横綱白鵬 退職決定で気になる「3つの疑問」…不可解な時期、憎き照ノ富士、親方衆も首を捻る今後
【2】憎き照ノ富士の“ひとり勝ち”をなぜ許したのか
今回の白鵬騒動で最も「得」をしたのは誰かといえば、それは元横綱照ノ富士(33=現親方)を筆頭とする伊勢ケ浜部屋に他ならない。
この日、照ノ富士は「伊勢ケ浜」株を継ぎ、今後は伊勢ケ浜親方として部屋の師匠になることが認められた。さらに白鵬の退職で浮いた「宮城野」株を、前伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)が襲名することが決定。今後は「参与 宮城野親方」として、5年間の定年延長が決まった。
「親方株がなければ、定年延長はできない。宮城野株が手に入らなければ、そのまま伊勢ケ浜株を照ノ富士に譲って退職。照ノ富士にすれば『退職してまで株を譲ってくれた』という恩があるので、5年間は師匠の面倒を見る“義務”が生じていた。それが白鵬の退職ですべてチャラになった」(若手親方)
伊勢ケ浜部屋のメリットはそれだけじゃない。
「この日の理事会で、白鵬の弟子たち、つまり宮城野勢は今後も伊勢ケ浜部屋が継続して預かることが決定した。幕内の伯桜鵬や来場所新入幕が確実な十両の草野ら、宮城野勢には有望な力士が少なくない。それらを全員ゲットできたのだから、まさに丸儲けですよ。ただでさえ、伊勢ケ浜部屋には尊富士、翠富士、熱海富士、宝富士、錦富士とさまざまなタイプの関取がいる。それがひとつ屋根の下で稽古しているのだから、強くなるにはもってこいです。本場所では同部屋対戦がないので、彼ら同士が当たらずに済むのも大きい」(前出の親方)
かつての藤島部屋がそうだった。全盛期は若貴兄弟に加え、貴ノ浪や貴闘力、安芸乃島など、実力者が多士済々。他の部屋の力士からは「藤島部屋の力士は、藤島部屋の力士と対戦しないからずるい」とやっかみの声すら出ていたほど。伊勢ケ浜部屋も同じことが言えそうだ。
白鵬も自身の退職が犬猿の仲である照ノ富士を利するだけとは理解していただろうが……それでもわずかな期間であっても照ノ富士を師匠として仰ぐのは我慢ならなかったのだ。