星野監督の鉄拳は「戦略」だった…楽天時代の俺は分かった上であえて皆の前で怒られていた
「二度と使わん」
「顔も見たくないわ」
この2つが口癖だった。そこまでボロクソに言った後、食事会場で会うと、何もなかったかのように声をかけてくる。
「彼女できたんか」
そんなことを聞いてくることもあった。そして、散々怒られた翌日の試合でスタメン起用されたこともあった。
星野監督はアメとムチをうまく使い分ける天才、というか俺からすればもはや「二重人格」。ようあそこまで“変身”できるなとしか思えなかった。
星野さんが監督として楽天に来たとき、すでに俺はチームで「番長」を張っていた。俺が右向けと言えばみんな右を向いてくれる状態。
それを分かっていたから、星野監督はチームがたるんでいたり、若い選手がミスをしたりすると、必ず俺のことを怒っていた。俺が怒られることによって周りが緊張するのを分かっていたからだ。
「たけしぃ!」
そう怒鳴られるたびに、「俺、関係ねえし……」と思いつつも、監督の戦略が分かっているし、昔から怒られ慣れているせいか、「はい、すいません」という言葉が口をついて出る。