著者のコラム一覧
鈴村裕輔野球文化学会会長・名城大教授

1976年、東京都出身。法政大学博士(学術)。名城大学外国学部教授。主な専門は政治史、比較思想。野球史研究家として日米の野球の研究にも従事しており、主著に「MLBが付けた日本人選手の値段」(講談社)がある。スポーツを取り巻く様々な出来事を社会、文化、政治などの多角的な視点から分析している。アメリカ野球学会会員。

ぜいたく税問題が示唆する球団の経営破綻への懸念 金満ドジャース、ヤンキースも安泰にあらず

公開日: 更新日:

 だが、ドジャースヤンキースなどのCBTの対象の常連となっている球団も安泰ではない。

 大谷翔平(ドジャース)、アーロン・ジャッジ(ヤンキース)、ウラジミール・ゲレロ・ジュニア(ブルージェイズ)らを筆頭に、有力選手は球団との間で長期契約を結ぶことが常態化している。その結果、契約締結から数年が経つと、最盛期を過ぎた選手に成績に見合わない高額年俸を支払い、高額年俸ゆえに成績が低下しても出場させ続けることで若手選手の起用が遅れるといった問題が生じる。

 現在、資金力に乏しい球団だけでなく、オリオールズやレッドソックスなど資金力が中位から上位の球団の間からも球団年俸総額制の導入に積極的な声が聞かれる。

 これは、CBTが年俸水準の上昇を抑制する効果がなく、いずれ財政が破綻する球団が出てくることを懸念しての発言でもある。

 周知の通り、年俸総額制には選手会が強硬に反対している。

 それだけに、機構と球団が正確な財務状況を開示することなしに選手会の同意は得られないし、選手会も制度の導入を拒否し続けることで球団の経営環境が悪化すれば、年俸水準の維持はおぼつかなくなる。

 CBTの話題は球界の繁栄を示すだけでなく、絶えず経営破綻の危険と背中合わせであることを教えるのである。

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