“裏拳”の名手だった古葉竹識さん ミスしたボクのわずかなスキを狙ってみぞおちに…
「監督さん、うちの息子はどつくほど頑張るヤツです。遠慮せんと思い切りどついてやってください」
その時、苦笑いを浮かべていたやさしそうな古葉さんが、鬼軍曹と恐れられた大下(剛史=守備走塁コーチ)さんに次ぐ鉄拳指導者だと気づくまでには、それほど時間はかかりませんでした。
入団1年目からよく裏拳をもらい、ベンチの後ろでうずくまったものです。裏拳はチームメートも気づかないほどの絶妙なタイミングで、リストをきかせてみぞおちに決めてきます。テレビ中継のある巨人戦でもお構いなし。ミスしたボクがグラウンドに背を向けた一瞬のスキを狙ってくるのです。
プロ2年目のオープン戦ではファンの前で蹴りを入れられました。下関での大洋(現横浜)戦。右翼についたボクの前に詰まった打球が飛んできました。猛然とダッシュし、ワンバウンドでグラブに収めるはずが、たまたま芝枯れの砂地に打球が落ちて予想したようにはバウンドしません。
「アレレレ……」
ボクは打球を置き去りにしたまま遊撃手の後ろまで行き、慌てて引き返すと打者は余裕の二塁打です。チェンジになると、無表情の古葉さんがベンチから出てきていきなりボクの太ももの内側を右足で蹴り上げたのです。内野スタンドは満員です。声を上げるわけにもいかず、痛さをこらえながら急いでベンチ裏に引っ込みました。


















