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春日良一五輪アナリスト

長野県出身。上智大学哲学科卒。1978年に日本体育協会に入る。89年に新生JOCに移り、IOC渉外担当に。90年長野五輪招致委員会に出向、招致活動に関わる。95年にJOCを退職。スポーツコンサルティング会社を設立し、代表に。98年から五輪批評「スポーツ思考」(メルマガ)を主筆。https://genkina-atelier.com/sp/

【緊急寄稿】IOC会長がトランプ米大統領のイラン攻撃に沈黙を貫く理由 透けて見える28年ロス五輪開催国への忖度

公開日: 更新日:

百家争鳴のトランスジェンダー問題については早々に決心

 コベントリー会長の発言は、スポーツが政治そのものに働きかけることには慎重であり、スポーツはあくまでスポーツの領域に留まるべきだという思想を示唆しているように思える。実際、「トランスジェンダー女子の女子種目参加」については、それまで国際競技連盟に委ねられていた問題にIOC自らが踏み込み、「生物学的女子のみが女子種目に参加できる」との方向性を示した。これはスポーツ内部の秩序維持の問題として扱われたのである。

 しかし、ここには根源的な問いが残る。

 スポーツが政治に対して何も語らないのであれば、「スポーツによる世界平和構築」というオリンピズムの理念は、どのように実践され得るのだろうか。オリンピックが単なる世界選手権や巨大スポーツイベントと異なるのは、その背後に理念が存在するからであると私は信じてきた。

 バッハ会長が国連やG7、G20といった政治的空間にも積極的に足を運び、各国首脳にスポーツとオリンピックの価値を訴え続けた姿勢は、まさにオリンピズムの実践であった。そこには、「スポーツのためのスポーツ」ではなく、「世界のためのスポーツ」という思想が存在していた。2028年五輪開催国である米国に対し、「休戦」の理念を十分に語れなくなった時、オリンピックはなお「世界平和を志向する祭典」であり続けることができるのだろうか。

 米国大統領トランプは就任直後にトランスジェンダー選手の女子競技参加を禁止する大統領令に署名している。米国が「休戦」を破ったことには沈黙し、百家争鳴のトランスジェンダー問題については早々に決心したコベントリー政権のあり様はトランプに忖度しているように見える。

 もう直ぐ始まるサッカーワールドカップを主催する国際サッカー連盟(FIFA)会長インファンティーノがFIFA平和賞を新設してトランプに授与するなど恥ずべきゴマスリぶりを発揮しているが、IOCは政治権力に毅然として対峙しなければ平和の祭典の主催者になれない。

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