「はい、チーズ」カート・ヴォネガット著、大森望訳

公開日: 更新日:

「タイタンの妖女」や「母なる夜」などの長編で知られる、2007年に逝去したアメリカの人気作家カート・ヴォネガット。

 本書は、彼が1950年代に書いた未発表の短編を集めた「Look at the Birdie」の翻訳本だ。執筆当時、30代だった著者がさまざまな技を尽くして繰り広げた短編は計14編。SFあり、ファンタジーあり、サスペンスあり、人情話ありと、その幅の広さに驚かされる。

 表題作「はい、チーズ」は、バーで出会った正体不明の男から、気に入らない人間を罪に問われずに殺す方法を聞くことになった男の話だ。正体不明の男は元精神科医と名乗り、話の途中で妻を呼んで無理やりその男の写真を撮らせる。男が写真を撮られた意味を悟ったとき、元精神科医の恐ろしい意図が見えてくる構成になっている。全編、突拍子もないアイデアを、あらゆるテクニックを駆使してさらりと仕上げる手腕は見事というしかない。

(河出書房新社 2000円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    永野芽郁は疑惑晴れずも日曜劇場「キャスター」降板回避か…田中圭・妻の出方次第という見方も

  2. 2

    紗栄子にあって工藤静香にないものとは? 道休蓮vsKōki,「親の七光」モデルデビューが明暗分かれたワケ

  3. 3

    「高島屋」の営業利益が過去最高を更新…百貨店衰退期に“独り勝ち”が続く背景

  4. 4

    「たばこ吸ってもいいですか」…新規大会主催者・前澤友作氏に問い合わせて一喝された国内男子ツアーの時代錯誤

  5. 5

    かつて控えだった同級生は、わずか27歳でなぜPL学園監督になれたのか

  1. 6

    永野芽郁×田中圭「不倫疑惑」騒動でダメージが大きいのはどっちだ?

  2. 7

    佐々木朗希「スライダー頼み」に限界迫る…ドジャースが見込んだフォークと速球は使い物にならず

  3. 8

    第3の男?イケメン俳優が永野芽郁の"不倫記事"をリポストして物議…終わらない騒動

  4. 9

    風そよぐ三浦半島 海辺散歩で「釣る」「食べる」「買う」

  5. 10

    永野芽郁がANNで“二股不倫”騒動を謝罪も、清純派イメージ崩壊危機…蒸し返される過去の奔放すぎる行状